(写真はイメージです/PIXTA)

辞めさせたい社員に退職勧奨をする場合、伝え方には特に注意しなければなりません。対応を誤れば、違法な「退職強要」であるとして損害賠償請求されるリスクがあるためです。今回は、実際に違法と判断され、会社側が損害賠償を払うこととなった3つの判例をもとに、スムーズな「退職勧奨」の方法と注意すべきポイントについて、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

パワハラや“強要”の危険性…注意したい「言い方」

退職勧奨をする場合には、伝え方や対応方法に十分注意しなければなりません。なぜなら、対応を誤ってしまうと、退職強要やパワハラであると認定され、損害賠償義務を負う可能性があるためです。

 

退職勧奨をする際の進め方や対応の注意点は、次のとおりです。

 

名誉を傷付ける言い方は避ける

退職勧奨をする際には、退職勧奨の対象となった理由である、相手の具体的な問題を指摘することは問題ありません。

 

たとえば、遅刻を繰り返しており注意をしても改善に至っていないという事実や、営業成績が芳しくないという事実などです。

 

しかし、相手の名誉を傷付ける言い方をしないよう、十分注意しましょう。名誉を傷付ける言い方とは、たとえば「お前は使えない」「死んだほうがいい」「役立たず」などです。

 

このような発言は、名誉棄損やパワハラに該当する可能性が高いといえます。

 

執拗に繰り返さない

退職勧奨は、執拗に繰り返さないよう注意しましょう。

 

面談を執拗に求めたり、顔を合わせるたびに繰り返し退職勧奨を話題にしたりすれば、退職強要であると捉えられる可能性があります。

 

脅迫や威圧的な言動をしない

相手が退職勧奨に応じるよう、脅迫していると捉えられかねない言動は避けましょう。

 

たとえば、「退職勧奨に応じなければ家族に危害を加える」と発言することは、明らかに脅迫に該当します。場合によっては、脅迫罪や強要罪といった刑法上の罪に問われる可能性さえあるでしょう。

 

ほかにも、たとえば「退職勧奨に応じなければ解雇する」「退職勧奨に応じなければ給与を下げる」「退職勧奨に応じなければ望まない部署へ異動させる」といった発言も退職強要に該当する可能性があるため、避けるべきです。

 

即答を求めない

退職勧奨を告げた場で、即答を求めることは避けるべきでしょう。退職勧奨に応じるかどうか検討する十分な時間がないままにその場で回答を求めてしまうと、退職強要であると判断される可能性が高いためです。

 

退職せざるを得ない状況に追い込まない

退職勧奨に応じてほしいからといって、相手が退職せざるを得ない状況へ追い込むことは避けましょう。たとえば、複数人で示し合わせて相手を無視することや、他の従業員とは異なる別室での業務を命じること、仕事を一切与えないことなどです。

 

このような行為は、パワハラや退職強要に該当する可能性があります。

 

次ページ退職勧奨が「違法」とされた判例3つ

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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