(※写真はイメージです/PIXTA)

「眼瞼下垂」は、その名の通りまぶたが下がってきて目が見にくくなる病態のことである。発症頻度が高い疾患のため、悩まれている方も多いだろう。「美容医療国際職人集団」と言われるJSAS会員であり、高須克弥医師の孫弟子にもあたる医療法人美来会理事長、九野広夫医師。九野氏は、美容医療の他院修正専門医院を立ち上げ、これまで数多くの不幸な医療事故や医療過誤を目にしてきた。本稿では九野氏に、「若年性眼瞼下垂」について解説いただく。

 

ARTの語源ARSと、必要条件および十分条件

  1. 必要条件をすべて満たすこと
  2. 必要条件に優先順位をつけること
  3. 必要かつ十分条件から俯瞰し、十分すぎて必要ではない条件(無駄)を破棄または再評価すること

 

これはあらゆる仕事や日常生活でも無意識に論理に組み込まれている概念ですが、私の拙書「宇宙次元統一理論」においても「この宇宙が宇宙であるための」という命題に解を求める際に導入されている数学的思考です。

 

この概念を目頭切開の術式やデザインに応用すると、第一義の必要条件として「傷跡を判らないくらいに目立たなくさせる」ことと「この手術を受ければご希望通りの目の形や開眼度が得られるか」ということです。つまり、デザインと技術(ART)には目的に合致した必然性と洗練性が要求されます。

 

患者さまは内眼角間距離(両目頭間の距離)を縮めたいのか、変えたくないのか、二重ラインは平行型にしたいのか末広型なのか、或いはその中間型をご希望なのか、目元の印象を吊り目にしたいのかタレ目が好みなのか、またはどちらでもないのか、左右差(日本人の殆どの左側の蒙古ヒダが、右側よりもツッパリや被りが多い)を改善したいのか、後者の条件を満たすためには上記の様な問診内容や診察が必須です。

 

全ての必要条件を満たしながら無駄を排除した理想的デザインは、個別の「必要かつ十分」=「才能ある技術(ART)による(無駄が無い)自然の配置(ARS)」に収斂します。

 

しかしながら残念なことに、殆どの美容整形医院ではステレオタイプマニュアルにのみ従いこの重要な手続きが踏まれていません。

上眼瞼マイクロ切開脱脂術

上眼瞼眼窩脂肪過多で脱脂が適応の場合には、多くの医院では5mm以上~cm単位の切開を必要としますが、当院では5mm未満で過不足なく脱脂ができています。脱脂にも職人技術を要します。小さな傷から個別に異なる眼窩脂肪の位置を正確に把握して中隔膜断端を露出させ、慎重に展開しなければ正常な挙筋腱膜にダメージ(最悪、医原的眼瞼下垂の原因になります)を与えてしまいます。

 

加えて、脱脂時に過度な力で牽引すると眼窩脂肪が途中で千切れてしまい、断端が奥に戻って(再摘出困難になって)しまいます。

 

当院ではその様なケースは皆無ですが、他院での脱脂後に再脱脂をご希望される方もおり、修正では難易度が格段に上がってしまいます。脱脂で得られたデッドスペースに新挙筋法を併用してタルミを収納させれば、脱脂後にも陥凹が起こらずに良好な開眼度も得られます。

 

しかし新挙筋法が無い医院では陥凹を避けるため脱脂量を手控えてしまうケースも少なくなく、再脱脂となると深部に断端が引き込まれているために、傷の大きさや挙筋腱膜のダメージ等のリスクが増大してしまうのです。

 

次ページ「脱脂と挙筋法のみ」で目の形をオーダー変更しながら若年性眼瞼下垂を治療した症例

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