独裁者・プーチンが抱く「ロシア帝国復活」の野望…戦火拡大の危険性も

独裁者・プーチンが抱く「ロシア帝国復活」の野望…戦火拡大の危険性も

ウクライナへの侵攻により世界中から非難を浴びたようにみえたロシア。しかし、欧米諸国による経済制裁措置を横目に交易を続ける中国やインド、サウジアラビアなどの存在もあり孤立を免れているロシアは、今後さらに戦火を拡大させるかもしれないと、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏はいいます。独裁者・プーチンが描く「ロシア帝国復活」のためのシナリオとは……みていきましょう。

プーチンが頭の中で思い描く「ロシアの地図」

プーチン大統領に見えている世界地図の中のロシアは、ソ連の崩壊という歴史的悲劇によって不当に縮小させられた版図だ。プーチン大統領にとってのロシアは、「ロシア帝国(1721~1917年)の地図」だ。

 

ロシア帝国は現在のロシアをはじめ、フィンランド、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア、モルドバ、ポーランドの一部や、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの中央アジア、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、外モンゴルなどユーラシア大陸の北部を広く支配していた大帝国だった。

 

ウクライナにはまず反ロシア的でない新政権を打ち立て、非軍事化させてヨーロッパとの緩衝地帯とする。さらに時間をかけて小国家に分割して、少しずつウクライナを併合していく。これがプーチンの狙いだろう。

 

ただしロシア軍の振る舞いは相当にひどく乱暴なので、現時点で兄弟民族のウクライナ人ほとんど全員を敵に回した。高まった反ロシア感情を鎮めるには、かなり時間がかかる。ロシアもそのことをよくわかっているので、ウクライナ人から内発的にロシアとの協力を望む政治エリートが出現するのを、時間をかけて待つと思う。

 

プーチン大統領がその先に見据えているのは、南の国境だ。欧米に接近を続けるジョージアには、ロシア軍の介入によって2008年に独立を宣言した「南オセチア共和国」がある。国連加盟国の中ではロシア、ニカラグア、ベネズエラ、ナウル、シリアの5ヵ国だけしか承認していない国家だ。

 

その南オセチア共和国のビビロフ大統領は22年3月末、「歴史故郷であるロシアと再統一する国民投票を近く行う」と表明した。国民投票が実施されれば、圧倒的多数の賛成を得ることは確実だ。

 

するとジョージアは反発して、南オセチア共和国に軍事介入する可能性がある。ジョージアが武力で阻止しようとしても、ロシアは力でそれをはね返し、「南オセチア共和国」を併合するだろう。

 

もう一つ注目されるのが、ロシアの飛び地の領土であるカリーニングラードだ。ここはリトアニアとポーランドに囲まれており、NATO加盟国であるリトアニアが国境を封鎖しようとしている。これは協定違反であり、ロシアにとって見過ごせない。軍事力で阻止しようとすれば、今度こそNATOがロシアとの直接戦争の危機に直面する。

 

プーチン大統領は長期戦略に基づいて、戦火をさらに拡大させるかもしれないのだ。

 

 

佐藤 優
作家・元外務省主任分析官・同志社大学神学部客員教授

 

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※本記事は、佐藤優氏の著書『プーチンの野望』(潮新書)から一部を抜粋し、GGO編集部にて再編集したものです。

プーチンの野望

プーチンの野望

佐藤 優

潮出版社

ロシアとウクライナの歴史、宗教、地政学、さらには外務官僚時代、若き日のプーチンに出会った著者だからこそ論及できるプーチンの内在的論理から、ウクライナ戦争勃発の理由を読み解き、停戦への道筋を示す。 〈戦争の興奮…

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