(※写真はイメージです/PIXTA)

「眼瞼下垂」は、その名の通りまぶたが下がってきて目が見にくくなる病態のことである。発症頻度が高い疾患のため、悩まれている方も多いだろう。「美容医療国際職人集団」と言われるJSAS会員であり、高須克弥医師の孫弟子にもあたる医療法人美来会理事長、九野広夫医師。九野氏は、美容医療の他院修正専門医院を立ち上げ、これまで数多くの不幸な医療事故や医療過誤を目にしてきた。本連載では九野氏に、従来のハイリスクな全切開(挙筋短縮術や前転法)ではない、「非切開式次世代の眼瞼下垂治療法」および「切開瘢痕の(メスを用いない)新治療法」について解説いただく。

眼瞼下垂治療の代替法である新挙筋法とは?

本法で用いる埋没専用糸は、糸1本に5円玉を40枚ぶら下げる実験をしても切れなかった極細の日本製7-0特殊糸です。それを丁寧に6重結紮していますので、術後に切れることや結び目が外れるリスクはかなり低く改良されています。更に、瞳とは接しない角度から1点で挿入するため、瞼の裏側から糸が露出して角膜を損傷するリスクとも無縁になりました。

 

結び目も閉眼時の瞼に透けない様な工夫もされています。但し、全切開をせずに個別ごとに異なる(同一人物でも左右で異なることもあります)挙筋腱膜に対しては、位置、方向(挙筋度)、深さを間違いなく的確に1回でできるかどうかの特別な職人技術が毎回問われます。

 

つまり、紋切型のマニュアルでは無く、毎回異なる術式をする必要があります。

 

更に全切開を伴わない他の(マイクロ切開脱脂やZ形成目頭切開)技術(※)を新挙筋法に組み合わせると、殆どの眼瞼下垂が治療できるだけでなく、クボミ・タルミ・多重ラインの修正・任意の二重ラインの幅や形・開眼度の調整・睫毛の形・瞼全体の左右差を更に改善させることも充分に可能です。

 

つまり個別にアレンジするだけで複合的な瞼の諸問題に対して一度に平均、一石五鳥以上の効果を引き出すことができるのです。これは、全切開を伴う手術や他の術式では一度には解決できていなかった効能のバリエーションです。

 

当院において仮性眼瞼下垂症例では、2007年の開業以来一切の全切開を伴う手術(挙筋短縮術・挙筋前転法・眉下切開・切除法・前額リフト術など)はもはや不要となっています。

 

寧ろ、新挙筋法では眼瞼下垂が治るだけでなく、目頭から目尻まで揃えて左右の瞼ごとで挙上度を微調整することまでできる上に、取り返しのつかない重篤な後遺障害を残しません。新挙筋法は埋没法の一種ですので傷跡は針穴だけで済み、万一の場合でも埋没糸を針穴から抜去、またはやり直す(リバーシブル)こともできます。

 

従って、ハイリスクな全切開(挙筋短縮術や前転法)を受ける前に先ず、ローリスクで低費用の新挙筋法を試みることは充分理に適っています。

 

陥凹と高度タルミがある眼瞼下垂症例を全切開や脂肪注入せずに治療した例

症例:51歳女性

 

他院手術歴:なし

 

御希望:加齢による目の周りのタルミとクボミや縮緬ジワを改善し眼が大きく開けるようにしたい。

 

脱脂した脂肪を涙袋とゴルゴラインに注入して欲しい。

 

当院治療法:両側。上眼瞼マイクロ切開脱脂術&当院オリジナル新挙筋法4点固定法&完全オーダーメイドZ形成目頭切開&経結膜下眼瞼脱脂術&脱脂した脂肪を(涙袋・インディアン(ゴルゴ)ラインに)注入。

 

治療合併症:内出血・炎症(発赤・熱感。・腫脹)・線維化等、ごくまれに糸露出・感染・後戻り・麻酔アレルギー等

 

 

Dr.コメント:

この症例は、上眼瞼のクボミとタルミと皮膚の厚み、眉・目の間の距離にそれぞれ左右差があり、しかも一見すると上眼瞼陥凹症に見られながらも術前シミュレーションにて余剰皮膚が収まらなかった方です。

 

タルミ収納スペース確保のために上眼瞼脱脂を併用しましたが、挙筋法がなければ決して到達し得ない発想です。更に、蒙古ヒダのツッパリも開眼の妨げになっていて、結果的に御本人様の御希望レベルとのギャップを埋めるべく上記複合手術で最大限の開眼が得られました。

 

加えて、脱脂した脂肪を涙袋とインディアンラインに注入することで目元の一層の若返り効果を引き出しています。

 

次ページ眼瞼下垂で「瞬きができる」方は全て新挙筋法で治療可能

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