(写真はイメージです/PIXTA)

賃借人が「立退料」を受け取ると、課税の対象となることがあります。しかし、受け取った「立退料」の性質により税金が異なるため、確定申告の際には注意が必要と不動産法務に詳しい森田弁護士はいいます。詳しくみていきましょう。

立退料の税務申告で裁判に至った事例

立退料にまつわる税金の裁判事例として、次のものが存在します。

 

事例1

事業者が納める消費税は、原則として、その事業者が受け取った消費税から、支払った消費税(仕入税額控除)を差し引いた額です。そのため、仕入税額控除に算入できる金額が大きいほど、事業者が納めるべき消費税は低くなります。この事例では、製造販売等を営むA社が賃借人らに立退料3億円超を支払って建物の明渡しを受けたあと、支払った立退料を消費税の申告の際に仕入税額控除の金額に算入したところ、原処分庁から否認されたものです。

 

A社はこれを不服として東京地裁へ申し立てたものの、東京地裁は「立退料の支払いにより賃借権を消滅させる行為は課税仕入れに該当しないため、仕入税額控除は認められない」旨を判示し、納税者の訴えを棄却しました。

 

事例2

賃借人が建物の一部を転貸していました。その状態で賃借人が建物を明け渡すこととなり、建物所有者から立退料を受け取ったうえで、自らも転貸人に対して立退料を支払っています。賃借人が建物所有者から受け取った立退料を一時所得として税務申告したところ、原処分庁はこれを不動産所得の収入金額にすべきだと主張したものです。

 

これに対して国税不服審判所は、次のようにわけて考えるべきこととしました。

 

・賃借人が受け取った立退料のうち、転貸人に支払った立退料相当の金額部分:不動産所得の収入金額

 

・賃借人が受け取った立退料のうち、上記以外の部分:一時所得

 

事例3

弁護士が事務所の明渡しにともない賃貸人から受領した立退料が、一時所得と事業所得のいずれに該当するかの判断が争われた事例です。

 

弁護士はこれを一時所得として確定申告をしましたが、東京地裁は、旧事務所から新事務所への移転によって増加する事業所得に係る必要経費を補填する趣旨のものとして授受されていることから、事業所得に該当すると判示して弁護士側の請求を斥けています。

 

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