(写真はイメージです/PIXTA)

2020年4月1日より、残業代請求の時効が従来の2年から3年へと改正されましたが、今後さらに5年に伸びる可能性もあるといわれています。これにより、未払い残業代のある企業のリスクがより高くなっています。今回は、未払い残業代請求への対策について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

 

未払い残業代に対する「企業側の罰則」

残業代を適正に支払わなかった場合のリスクは、様々なものがあります。未払い分の残業代、遅延損害金及び付加金の支払いなどのみではありません。残業代の不払いは、労働基準法の規定により、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰の対象となります。懲役の可能性もある重い罪となりますので注意しましょう。

 

さらに、未払い残業代の問題は、企業イメージの悪化にも繋がりかねません。このように、未払い残業代にはさまざまなリスクが存在していますので、しっかりと各種対策やリスク予防策を講じることが大切です。

請求された場合、企業が取るべき対策

従業員から未払い残業代を請求されてしまった場合、企業が早期に取るべき対策は、次のとおりです。

 

早期に弁護士へ相談する

従業員から未払い残業代を請求されてしまったら、その場で回答することは避け、できるだけ早期に労務問題に詳しい弁護へ相談しましょう。

 

従業員が未払い残業代を請求してきている時点で、従業員側がすでに弁護士へ相談したり依頼したりしている可能性が高いためです。無理に自社のみで対応をしようとして、不用意な発言をしたり余分な資料を渡してしまったりすれば、かえって不利な状況となってしまうかもしれません。

 

未払い残業代がいくら発生しているか確認する

従業員から未払い残業代の請求をされたら、未払い残業代が実際にどのくらい発生しているのか、残業の実態を早期に確認しておきましょう。ただし、未払い残業代を請求される企業では労務管理が徹底されていない場合も多く、企業側で従業員の残業時間が適正に把握できていないケースも少なくありません。

 

一方、未払い残業代を請求する従業員としては、自己の手帳などで、独自に残業時間を記録いているケースが大半です。いずれにせよ、請求をしてきた従業員に回答をする前に、弁護士の協力を得つつ現状の把握に努める必要があります。また、その従業員の未払い残業代のみならず、ほかの従業員の残業代についても併せて確認しておきましょう。次に解説する、ほかの従業員にまで波及した場合のリスクをあらかじめ把握しておくためです。

 

ほかの従業員への影響に注意する

1人の従業員から未払い残業代を請求された際、企業としてもっとも注意しなければならないのは、ほかの従業員への影響です。未払い残業代が発生している従業員の人数が多く、かつ1人あたりの金額も多額となる場合には、仮に多くの従業員から一度に残業代を請求されてしまうと、支払いができず会社の経営自体を左右する問題にまで発展するリスクがあるためです。

 

そのため、あまり感情を逆なですることのないように注意しつつ、面談の場では弁護士の立ち会いのもと、慎重に対応する必要があります。また、ほかの従業員のモチベーションが悪化し、一斉退職につながるような事態も避けなければなりません。

 

次ページ未払い残業代のリスクへの「予防策」

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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