
国民年金基金連合会は2022年11月1日、企業型確定拠出年金(企業型DC)について、転職等で会社を離れた約112万人分の年金資金、総額約2,600億円が運用されず放置されていることを明らかにしました。このままでは運用機会が失われるだけでなく、月々の手数料により目減りしてしまいます。背景には、制度の十分な理解が浸透していないことが挙げられます。本記事では、企業型DCとはどのようなものか、解説します。
企業型DCの税制優遇措置
企業型DCには、「掛金拠出段階」、「運用段階」、「受け取る段階」のそれぞれにおいて税制優遇措置があります。
◆掛金拠出段階
まず、掛金を拠出する段階では、掛金は非課税です。
すなわち、事業主が拠出した掛金は、福利厚生費として会社の経費となります。また、給与ではないので、社会保険料もかかりません。
一方、個人の側でも、給与とみなされないので、所得税・住民税、社会保険料がかかりません。
さらに、マッチング拠出の場合、個人も掛金を負担することになりますが、その額は所得控除の対象となり、所得税・住民税がかかりません。ただし、社会保険料はかかります。
◆運用段階
次に、運用段階では、運用益が非課税となります。
通常であれば、運用益が出たら毎年、所得税・住民税が合計20%課税されます。しかし、企業型DCでは非課税です。
したがって、税金で取られない分の額を運用に回すことができます。
なお、年金資産には本来特別法人税がかかりますが、2023年3月末まで凍結が決定されています。
◆受け取る段階
積み立てられたお金を受け取る段階では、「年金」と「一時金」から選択でき、どちらでも税制優遇を受けられます。
まず、「年金」の場合は、「退職所得」として扱われ、積立の期間に応じて「退職所得控除」を受けることができます。
また、「一時金」の場合は、「公的年金等に係る雑所得」として扱われ、「公的年金等控除」を受けることができます。