
コロナ禍で在宅勤務やリモートワークが一気に普及しました。働き方改革の中で制度だけは用意されていたリモートワークですが、実際の利用者は普及には至りませんでした。2020年春からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、緊急避難的な対応として導入が進み、大企業を中心にある程度普及しましたが、ここにきて「オフィス回帰」の現象が明らかになっています。その理由を探ります。
テレワークをしている企業は半減した
新型コロナの蔓延で2020年以降テレワークが急増しオフィス不要論が叫ばれています。しかし本当にオフィスは不要なのでしょうか。
コロナ禍以前の日本の企業はオフィスを構え、そこに労働力を集約して仕事をするという事が当然のこととして行われてきました。
そして日本経済の中心である東京都心は長い間、その人気が衰えることはありませんでした。
三鬼商事の「オフィスマーケット」データによると、都内のオフィスビルの空室率は12年6月の9.43%から下がり続け、20年2月には1.49%になりました。
ところが4月7日から5月25日まで行われた第一回緊急事態宣言などで行動抑制が求められ、都内にある多くの企業が在宅勤務をするようになったことで経営者たちの意識が変わっていったといいます。
「多くの社員がテレワークをすれば、オフィスは閑散とした状態になるわけです。しかしそれでも賃料は発生する。一方で社員からは当初、『会社に行かなくて済むから通勤ラッシュにも巻き込まれることもなくて快適だ』とテレワークを称賛する声が上がっていた。『だったらオフィスなんていらないのではないか』といってオフィスの契約を解約する経営者もかなりいたようです。ただしばらくすると、そんな経営者たちも再びオフィスが必要だといって戻ってきています」(ベンチャー企業経営者)
実はテレワークを実施することが必ずしも仕事の効率を上げることにはつながらないと実施する企業が減ってきていることがさまざまな調査で浮き彫りになってきています。
22年7月4日から5日にかけて20歳以上の企業や団体に雇用されている1100人にアンケート調査を行った公益財団法人日本生産性本部の「第10回 働く人の意識に関する調査」では、20年5月には「テレワークを行っている」と31.5%の人が答えていたのが、22年7月の調査では16.2%まで減少しているというのです。
東京都の調査(都内の従業員30人以上の企業が対象)でも20年3月には62.7%の企業で行われていたテレワークが22年7月には52.3%まで減少しているといいます。
「自宅での勤務に満足」は75%だが
ではなぜこのようなことが起こっているのでしょうか。
そこで日本生産性本部のデータを詳しく見ていきましょう。
テレワークの実施状況を従業員規模別に見ていくと、100人以下の会社の場合は20年5月には22.5%だったのが、22年7月には10.4%、101~1000人までに会社では33.0%から17.6%、1001人以上の企業の場合は50.0%から27.9%と大幅に減少していて、いずれの規模の会社でも22年7月は過去最低の実施率を記録しています。
「これまで、テレワーク実施率は中・大企業が牽引してきた。しかし、今回、いずれの規模においてもテレワークの退潮が明らかである」(「第10回 働く人の意識に関する調査」 より)
テレワークの実施率を年代別で見てみても20代は34.3%から12.0%、30代は27.2%から15.5%、40代以上は32.0%から17.4%となり、「20代の実施率は全調査回・前年代を通じて最低水準、30代はそれに次ぐ低さとなっている」(同)という。
週当たりの出勤日数で見ていくと、22年7月は0日が16.9%、1~2日が32.6%、3~4日が30.3%、5日以上が20.2%となっています。