(※写真はイメージです/PIXTA)

司法書士・佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所 所長)が、2023年に施行される「相続土地国庫帰属制度」について解説します。

負担金は最低20万円から。場合によっては100万円以上

負担金はどれくらいかかるのでしょうか? パブリックコメントに掲載された『政令案に基づく負担金算定の具体例』(図表3)を見ながら解説します。

 

出典:法務省
[図表3]政令案に基づく負担金算定の具体例 出典:法務省

 

図表3では、上から宅地、田・畑、森林、その他というように並んでいます。土地の地目よって金額は変わるものの、宅地であれば、基本的には「面積にかかわらず、20万円」としつつ、「一部の市街地や宅地については、面積に応じ算定」となっています。一定の宅地に関しては、広くなれば金額が上がるということですね。

 

田・畑の負担金算定も、宅地と同様です。

 

森林に関しては、宅地や田・畑のような基本料金はなく、面積に応じて算定されるようです。

 

その他は、雑種地や原野などが該当しますが、これは面積にかかわらず一律20万円となっています。

 

一部の宅地や田・畑では「面積に応じて算定」とありますが、その計算に使われるのが図表4です。

 

出典:法務省
[図表4]政令案に基づく負担金算定表 出典:法務省

 

このように、相続土地を国庫帰属させるには最低20万円から、場合によっては100万円以上のお金がかかってくるようです。

 

相続した不要な土地を国庫帰属させるには、要件のハードルは高いわ、お金もなかなかかかるわで、正直なところ、私は使えない制度なのではないかと考えています。

 

ですので、相続したくない土地がある場合は、他の方法も検討しておいたほうがよいのではないでしょうか。本稿の最後に、国庫帰属以外の3つの方法を解説します。

国庫帰属以外の3つの方法

(1)相続放棄

まず1つ目は「相続放棄」です。相続放棄を使えば、そもそも亡くなった方からの相続をしないことになります。いらない土地も含めて承継せずに済むわけです。

 

ただし相続放棄には期限があり、被相続人が亡くなって自分が相続人になったことを知ってから3ヵ月以内に手続きをしなければなりません。すでに相続をしてしまい、時間が経っている場合には使えなくなってしまいます。この点がまず相続放棄の厳しい条件です。

 

また、相続放棄は「相続財産のすべてを引き継がない」という手続きですので、山林や田舎の土地といった負の不動産だけを手放せる方法ではありません。遺産のいいとこ取りができる方法ではなく、ゼロか100かという選択肢になるという問題もあります。

 

他にも、相続放棄後の管理責任の問題があります。相続放棄をすればその不動産の所有権は相続せずに済みますが、管理責任だけは残ってしまうのです。管理責任から免れるためには、相続財産管理人を選任したり、裁判所に行ったりしてお金がかかることもあります。

 

相続放棄は確かに「使えるケース」もあるのですが、場合によっては不向きな場合もあります。相続放棄を検討するのであれば専門家に相談して、適切かどうかの判断を聞いたほうがよいかと思われます。

 

【相続放棄】

●相続人だと知ってから3ヵ月以内という期限がある

●いらない不動産だけを放棄できない

●相続放棄後の管理責任の問題

 

(2)共有持分の放棄

これは相続土地が共有不動産であった場合にだけ使える方法です。

 

共有者のうちの誰かが自身の持分を不要としたとき、持分を放棄することができます。

 

放棄した持分は他の共有者に帰属することになります。

 

持分放棄にあたって他の共有者が名義変更に協力してくれるかどうかという問題はあるものの、他の人に権利を移すこと自体は、共有者のうちの1人が単独で行うことができます。

 

【共有持分の放棄】

●共有不動産のみ使える方法

●登記名義を変更するには原則として共有者の協力が必要

 

(3)不動産会社による負動産の引き取りサービス

これは、不動産会社が売買契約を結んで買い取ってくれるという体(てい)ではありますが、不動産会社が価値のない不動産をお金を出して買い取ってくれることはありません。逆に相続人側がお金を払って引き取ってもらう形になります。

 

金額は不動産の内容によって変わり、場合によっては数十万円かかることもあります。引取先の不動産会社がきちんと信頼できる会社かどうかは注意しなくてはいけません。

 

実際、中には詐欺まがいの会社もあります。たとえば高齢者の方が原野などの不要な不動産を持っていた場合、不動産会社側からアプローチをかけてくることがあります。

 

謄本を調べた会社が「その不動産、いらないのであれば買い取りましょうか」とやってきて、高齢者の方は「ああ、助かるな」と思ってその不動産を売り渡したつもりでいたら、実は売買契約書に別の書類が紛れ込んでいて、変な土地を買わされていた…という詐欺まがいのトラブルも結構起こっているのです。

 

ですから、不動産会社の引き取りサービスを検討する場合には、相手先となる不動産会社が信用に足るかどうかをきちんと気をつけなくてはいけません。

 

【不動産会社による負動産の引き取りサービス】

●有償の場合もある

●信頼できる会社か要確認(詐欺まがいの会社もある)

 

以上、今回は2023年の4月27日に施行される相続土地国庫帰属制度について解説しました。なかなか使いにくいところもある制度なので、国庫帰属以外の方法についても押さえておくとよいでしょう。

 

【動画/相続した不要な土地の国庫帰属制度ってどんなもの?】

 

佐伯 知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

 

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