(※写真はイメージです/PIXTA)

司法書士・佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所 所長)が、2023年に施行される「相続土地国庫帰属制度」について解説します。

相続土地を国庫帰属させるための10個のハードル

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<要件に満たない土地>

1. 建物が存在する土地

2. 担保権等が設定されている土地

3. 通路など他人によって使用される土地

4. 土壌汚染されている土地

5. 境界が明らかでない土地

6. 崖がある土地

7. 工作物、車両、樹木が地上にある土地

8. 地下に除去すべき有体物がある土地

9. 隣人とのトラブルを抱えている土地

10. 上記1~9までに掲げる土地のほか、通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する土地

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上記に該当する相続土地については、国は引き取ってくれません。

 

「1. 建物が存在する土地」は読んでの通り、その相続土地に建物があるとダメということですね。

 

「2. 担保権等が設定されている土地」の担保権というのは、抵当権などのことです。これは登記簿謄本を確認すればわかります。登記簿謄本の「権利部(乙区)」(図表1)という欄に抵当権などが記載されていれば、引き取ってもらえないことになります。

 

出典:法務省
[図表1]赤枠で囲んだ部分が登記簿謄本の「権利部(乙区)」 出典:法務省

 

「3. 通路など他人によって使用される土地」から「10. 上記1~9までに掲げる土地のほか…」についても、読んでの通りです。

 

とにかく、きれいでトラブルもない土地でないと、国は引き取ってくれないということです。

 

放棄したい土地というのはだいたい、地方の山林や、バブルの頃に「ここをリゾート開発するから」と買わされたものの、結局開発されなかった田舎の土地などです。

 

相続土地国庫帰属制度の利用ニーズが多いのは、これらの土地を親(被相続人)が買っていて、相続の際に子供が「こんなのいらないよ」と困ってしまうケースでしょう。しかし上記の要件を見る限り、そのようなケースではなかなか使いにくい制度なのではないか?というのが正直な感想です。

相続土地を国庫帰属させるには?手続きの流れ

もし要件を満たした場合、どうやって国に帰属させるのでしょうか。ここからは国庫帰属の手続きについて解説します。

 

出典:法務省
[図表2]手続きイメージ 出典:法務省

 

❶承認申請

まず、相続または遺贈によって土地を取得した方々が申請をします。ちなみに共有地の場合は、共有者全員で申込むことになります。共有者が2人であれば2人で申請、3人であれば3人で申請というように、全員で行わなくてはいけません。

 

❷法務大臣(法務局)による要件審査・承認

申請の次は、法務大臣(法務局)による要件審査を受けます。先ほど挙げた10要件に該当しないかを確認され、問題なければ承認が下ります。

 

❸負担金の納付

そして、申請者は10年分の土地管理費用に相当する負担金を納付しなければなりません。厳しい審査を経て、お金を払うことで最終的に国庫帰属させられるということですね。

次ページ納付する負担金はいくら?

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