(※写真はイメージです/PIXTA)

中国の不動産バブル崩壊と、それに伴う金融危機が懸念されています。この問題について過去に日本で起きた金融危機の状況と照合すると、複数の共通点があることがわかります。そこをたどると、今後の中国の状況が読み解けるかもしれません。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

銀行の貸し渋りで、借り手が大量倒産する可能性も!?

取引銀行から融資の返済を求められた借り手は、ほかの銀行から借りようとしますが、それは容易なことではありません。第一に、銀行は新規顧客への融資に際して慎重な審査をするからです。第二に、他の銀行も自分の資金繰りを気にして融資を絞る可能性があるからです。

 

銀行は、借り手の信用力をしっかり調べたうえで融資をするのが原則です。既存の取引先であれば、相手の状況がわかっているので「また貸して下さい」「わかりました」ですむかもしれませんが、新規顧客からの借入申し込みに際しては、慎重に信用力を調べるので時間がかかります。

 

他行に貸していた銀行は、貸出を回収するので資金的な余裕はありますが、それを金庫に積み上げて貸出には用いないかもしれません。「銀行が倒産するという噂が流れ、預金者が一斉に預金を引き出しに来たら(取り付け騒ぎになったら)困る」というわけです。

 

問題が深刻なのは、軽微な問題がある借り手です。銀行は、既存取引先に軽微な問題が生じても、融資を無理に回収せずに回復を待つ場合も多いのです。無理に回収しようとして倒産されると、回収額が大幅に減ってしまう場合があるからです。

 

しかし、軽微な問題がある借り手が取引銀行から返済要請を受けた場合に、ほかの銀行に融資を頼みにいっても、融資が受けられる可能性は非常に低いわけです。したがって、取引銀行が貸し渋りを始めると、軽微な問題を抱えた借り手が大量に倒産する可能性もあるわけですね。

公的資金の注入に苦労した日本政府

銀行の資金繰りの問題は、中央銀行が銀行への融資を弾力的に実施すればなんとか乗り切れますが、さらに厳しいのは自己資本比率規制による貸し渋りです。

 

大胆に簡略化していえば、世界中の主な銀行は条約によって「自己資本の12.5倍までしか融資してはならない」と決められています。そこで、銀行が赤字になって自己資本が減ってくると「貸してもいい金額」が減ってくるのです。

 

それによって銀行が融資を回収せざるを得なくなると、中央銀行が銀行の資金繰りを支援しても効果はありません。金がないから貸せないのではなく、「金があっても貸してはならない」からです。

 

そうなると、政府が銀行に増資をさせてそれを引き受けて(公的資金の注入)、銀行の自己資本を回復させることが必要となります。銀行の自己資本が回復すれば、銀行は貸し渋りをしなくてすむようになるからです。

 

しかし、それには世論の反対が強いので、日本政府は大変苦労しました。「銀行を助けるために国民の血税を使うとはケシカラン」という反対が強かったのです。世の中の人々は自己資本比率規制のことをしらないでしょうから、「公的資金の注入が、結局は貸し渋りを受けている中小企業を助けることになる」ということがなかなか理解されなかったわけですね。

 

もっともこれについては、中国政府が世論をどれくらい気にするのか、という点が要注目でしょう。世論を気にせず、いいと思った政策を断行するということであれば、問題が深刻化を免れる可能性もありますね。

 

筆者としては、中国共産党の経済に対するグリップは日本政府より遥かに強いので、今回も「政府が何とか切り抜ける」可能性が高いような気もしていますが、そのあたりは中国の事情に詳しくないので…。

 

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