(※写真はイメージです/PIXTA)

日本ではこれまで円安になると経済的メリットがあると説明されてきました。しかし、自国の経済構造が消費主導型にシフトすると状況が変わってきます。このところ日本人の生活が苦しくなっているのはなぜでしょうか。経済評論家の加谷珪一氏が著書『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)で解説します。

消費を拡大する絶対的な方法はわからない

では、消費というのはどうすれば拡大するのでしょうか。

 

困ったことに、経済学の世界では消費を拡大する絶対的な方法というものが明らかにされておらず、これが消費主導型経済における処方箋を難しくしています。しかしながら、人々がどのような基準で消費を行っているのかについては研究が行われており、一連の学術的な分析は消費拡大の有力なヒントになります。

 

ケインズ経済学では、人々は自身が稼いだ額の一定割合を消費すると仮定します。所得水準によって比率は様々ですが、全体を平均すると、稼ぎの一定額を消費し、残りを貯蓄に回すというのは、現実経済をそれなりに反映した考え方と言ってよいでしょう。

 

しかしながら、稼ぎに対する消費の割合は常に一定とは限りません。所得に対する消費の割合が一定であるというケインズの考え方は、あくまで短期的な経済の動きを分析するための仮定に過ぎません。「支出の動機は相互に絡み合っており、それらを敢えて分類しようとすれば、誤った分類をしてしまう恐れがある」(ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』岩波書店)として、あえてモデルを単純化したわけです。

 

所得の一定割合を消費するという概念はあくまで短期的なものであって、その比率が硬直的であるとはケインズは考えていませんでした。ケインズは、長い目で見た場合、消費を決定付ける要因として、客観的要因と主観的要因の2種類に分類しています。

 

客観的要因としては、企業の人件費の比率(厳密には賃金単位)、企業の原価償却の水準、株や不動産など資産価格の推移、期待インフレ率(将来、どのくらい物価が上がると消費者が予想しているか)、将来の不確実生、税制の変化といった項目があります。

 

主観的要因としては、リスクに対する消費者の感覚、将来予想される所得の変化、貯蓄に対する価値観、将来に対する主体的な意思の有無、消費者の性格など、多くの項目が列挙されています。あまりにも対象が複雑であることからケインズはあえて単純化したわけですが、人々はどのような理屈で消費水準を決定するのかという課題は、その後の経済学者に引き継がれ、いくつかの仮説が提唱されることになりました。

 

加谷 珪一
経済評論家

 

 

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本連載は加谷珪一氏の著書『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

縮小ニッポンの再興戦略

縮小ニッポンの再興戦略

加谷 珪一

マガジンハウス新書

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