(※写真はイメージです/PIXTA)

平時はいたって普通の94歳の父親。認知症のスイッチが入ると玄関のチャイムの音に異常なほど反応します。見知らぬ人が家に来ることを嫌がるようになったという。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんが認知症の父を介護する日々を現場報告する特別編をお届けします。

見知らぬ人が家に来ることを嫌がる

わが家のじーじは、アルツハイマー星に住む認知星人。地球人の時はいたって普通の94歳。認知星のスイッチが入ると玄関のチャイムの音に異常なほど反応する。

 

数ヶ月前までは、チャイムの音がしてもちっとも反応を示さなかったじーじ。耳が遠いので聞こえないのだろうと思っていた。ところが最近「ぴんぽ~ん」の音がすると即座に反応し、すり足でよろよろとしながら玄関まで行くのである。

 

以前はそんなことはなかったのだが、ここ数年、じーじは見知らぬ人が家に来ることを好まない。好まないというよりも嫌がると言ったほうがいいかもしれない。来客と玄関先で話をしていると、私の背後に仁王立ちし、明らかに不審そうな表情で相手をにらみつける。そして私に背後から「あなたはなんのご用があってこられたのですか?」と宅急便のお兄さんに話しかけたこともあったぐらいだ。

 

なので最近は、玄関のチャイムが鳴ると急いで、玄関に行き、扉を閉めて玄関の外で来客の対応をしているのだが、ちょっとした出来事が起きた。

 

どうやら私が住んでいる地域には、高齢者見守り隊的なものがあるらしく、定期的に「お元気ですか?」とじーじを訪ねてくる。「はい」と返事をしても、「今いらっしゃいますか?」とじーじの顔を見るまで帰ろうとはしない。きっと、その家にいる高齢者の顔を確認することが任務のようなので、じーじを呼んでみた。

 

すると案の定、敵意むき出しの表情で相手をにらみつけるじーじ。

 

しかし、「お元気そうでなによりです」などと声をかけられたとたん、外ヅラ良夫君を発揮しめちゃくちゃ愛想のよい受け応えをするではないか。おまけに、「何度も来たんですが、不在だったので心配しました」と言われたら「平日はいろいろ忙しいんですよ~ワハハ」と笑っている。

 

が! 相手が帰ったとたん「なんだ! あいつは、誰だ」と超不機嫌。先ほどの笑顔はどこへやらだ、おまけにず~っと文句を言っている。そこで

 

「あの人は、じーじが元気でいるかを確認をするのがお仕事なんだよ。だから、じーじが家にいないと心配してくれるんだね」

 

と言うと。

 

「何を言っているんだ。あいつは憲兵なのが解からんのか」

 

け! 憲兵???だと?

 

「俺がニコニコ話したのは、あいつが憲兵だからだ。逆らったらなにをされるかわからんからな」と。じーじにとっては、高齢者見守り隊的なボランティアの方は憲兵だったらしい。

 

余談になるが、高齢者だけの世帯や独居(一人暮らし)の世帯への定期訪問はとても重要だと思う。しかし、我が家の数件先の高齢者だけの世帯への訪問はしていないという。理由を聞いてみたところ、事前に市が配布したアンケートが返信されていないので、リストから外れていたようだ。

 

わが家のような元気家族と同居している家を訪問し、確認する重要度が高いと思う世帯が訪問先から外れているとは、なんとも不思議な見守り隊だと思ってしまうのである。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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