「本当に貧しいのは、いくらあっても満足しない人」…「世界一貧しい大統領」の金言。真の意味

「本当に貧しいのは、いくらあっても満足しない人」…「世界一貧しい大統領」の金言。真の意味
(※写真はイメージです/PIXTA)

1970年に「生命科学」という分野の創出に関与し、早稲田大学、大阪大学で教鞭をとった理学博士の中村桂子氏。生物を知るには構造や機能を解明するだけでなく、その歴史と関係を調べる必要があるとして「生命誌」という新分野を創りました。そして、「歴史的文脈」「文明との相互関係」も見つめ、科学の枠に収まらない知見で生命を広く総合的に論じてきました。科学者である彼女が、年齢を重ねた今こそ正面から向き合える「人間はどういう生き物か」「人として生きるとは」への答えを、著書『老いを愛づる』(中公新書ラクレ)として発表。自身が敬愛する各界の著名人たちの名言を交えつつ、穏やかに語りかける本書から、現代人の明日へのヒントとなり得る言葉を紹介します。

月1,000ドルで暮らす「世界一貧しい大統領」

そこでムヒカ大統領に戻り、「地球サミット」でのスピーチに耳を傾けましょう。要旨をまとめます。

 

「この会で話されているのは、持続可能な発展と世界の貧困をなくすことです。でも今富んでいる人々と同じように世界中の人がなれるだけの原料は、地球にはありません。

 

残酷な競争で成り立つ消費主義社会では“みんなの世界をよくしていこう”という共存共栄はできません。人類は消費社会にコントロールされています。命よりも高価なものは存在しません。

 

それなのに私たちは、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。過剰な消費が世界を壊しているにもかかわらずです。ギリシャやローマの哲学者も南米の先住民族アイマラ族も同じことを言っています。

 

『貧しい人とは少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人だ』と。発展は幸福の対局にあってはなりません。発展は本当の幸福をめざすものです。

 

愛、人間関係、子どもを大切にすること、友達を持つこと。そして最低限のものを持つことです。幸福が私たちにとって最も大切なものなのですから」

 

ムヒカ大統領は月1,000ドルで暮らしていると書きましたが、それ以外の給料は寄附をしているとのことです。大統領公邸には入らず首都郊外の質素な住居で暮らし、個人資産は1987年製のフォルクスワーゲン(ビートル)とトラクターと農地だとあります。

 

自作の野菜を食べて暮らすという、およそ権力者とは遠い存在です。

 

そこで「世界一貧しい大統領」というレッテルが貼られることになったのですが、御本人は「自分は貧しいとは思っていない。いまあるもので満足しているだけなんだ。私が質素でいるのは、自由でいたいからなんだ」と言っています。

 

そうか、質素か、なるほどです。しかもそれで自由が手に入るのですから、なんとすばらしいではありませんか。最近のニュースではお金や地位を求めて阿(おもね)る人ばかり見せられている気がします。

 

自由な発想で本当に大事なことができる社会でありたい。そのためにもここで語られている自由が広がって欲しいものです。

 

地球サミットでのスピーチでは、貧しいという言葉から通常思い浮かべる意味は間違っていると指摘されています。

 

本当に必要なものが手に入らない状態に置かれる人がない社会を求めることはもちろん大事なのですが、そのために必要なのは「いつも、もっともっと欲しいという状況にある貧しさから皆で抜け出すことなのだ」。ムヒカさんはこう言っています。

 

とくに富裕層の人がまだまだ欲しいとやっていたのでは、地球がもたないでしょう。実際には、それをやっていますね。今最も大きな問題はそこにあるのです。

次ページ「貧乏」はつらいが「質素」は楽しい
老いを愛づる

老いを愛づる

中村 桂子

中公新書ラクレ

白髪を染めるのをやめてみた。庭掃除もほどほどに。大谷翔平君や藤井聡君にときめく――自然体で暮らせば、年をとるのも悪くない。人間も生きものだから、自然の摂理に素直になろう。ただ気掛かりなのは、環境、感染症、戦争、…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録