相続発生前に財産移転を行う生命保険活用スキーム

前回は、「低解約返戻金型・逓増定期保険<通称:4年移転タイプ>」を活用して資産を圧縮する方法を説明しました。今回は、相続発生前に財産移転を行う生命保険活用スキームを見ていきます。

契約4年目に相続が発生しなければ、契約を息子に譲渡

個人間で生命保険を利用して資産移転するスキームの2つ目は、相続発生前に評価額を圧縮して移転する方法です。

 

前回までに説明してきた相続発生と同時に資産を移転するスキームで最大の懸念事項となっていたのは、「いつ相続が発生するか読めない」ということでした。それでは最大の評価圧縮効果を本当に得られるかどうかはわかりませんし、想定している期間内に、相続が発生しないということも考えられます。

 

そこで、相続が発生しなかったとしても、法人─個人間の移転に準じて、保険契約を売却(譲渡)して、資産移転を完結させるという方法がよく見られます。それでは、先ほどの「4年移転タイプ」を例に、どのような流れになるかを確認してみましょう。契約の形態は以下の通りになります。

 

●契約者・・・父親

●被保険者・・・息子

●保険金受取人・・・父親

 

この状態で、仮に4年目に父親が死亡した場合には、そのときの解約返戻金相当額での相続となりますが、相続が発生しない場合には、この契約を息子に譲渡します。そうなると、契約形態が次の通りとなります。

 

●契約者・・・息子

●被保険者・・・息子

●保険金受取人・・・息子の遺族(孫など)

 

契約形態からすると、相続発生時と同じですが、違ってくるのは息子側の処理です。息子は4年目の解約返戻金相当額「1440万円」でこの保険を買い取っていますので、1440万円を父親に支払う必要があります。

 

そして、5年目の保険料を息子が支払い、解約返戻率95%の権利を獲得し、実際に解約をすると「9500万円」の現金を回収できます。なお、父親には6560万円の売却損が発生します。

 

このときには、法人─個人間の移転の方法に準じると、一時所得の対象になることは前述しましたが、この場合は、相続のときと違い、父親が負担した保険料を息子が負担した保険料として引き継ぐことは出来ません。

 

そのため、息子は、買取金額の「1440万円」、5年目の保険料「2000万円」だけが一時所得を得るために支出した金額となり、一時所得の計算が、(9500万円−1440万円−2000万円−50万円)×1/2=3005万円となります。仮に所得税と住民税を合わせた実質税率が50%であった場合、1502万5000円の税額となります。

契約5年目になれば、3つの出口戦略を活用できる

また、5年目には解約以外にも他の出口戦略があります。それは、

 

●払い済み保険にして保険会社に据え置く

●契約者貸付制度を活用して解約返戻金の90%まではいったん回収する

●払い済み制度と契約者貸付制度のW戦略を採用する

 

という3つの出口戦略です。法人から個人への財産移転とは異なり、今回は個人間のやりとりですが、個人でも行うことが可能です。払い済み保険にしていったん保険会社に据え置けば、9500万円の解約返戻金を資産運用しつつ、1億4000万円の一生涯の死亡保障を得ることができます。

 

また、契約者貸付を最大限活用すると、8550万円のキャッシュを一時的に無税で回収しつつ、1億4000万円の死亡保障を一生涯確保することができます(利息の支払いが必要)。

 

また名義変更は、2親等内の親族や3親等内の血族など、保険会社が指定した範囲内であれば、いつでも自由に行えます。最終的に誰がキャッシュを回収するかで課せられる税金も違ってきます。どの出口戦略を取れば最終的な手残りの最大化を目指せるか、じっくり考えて結論を出したいものです。

 

なお、保険の税務には「実質保険料負担者」という考えがあります。仮に、契約者が父親であっても、その保険料を実質的に負担しているBという人物が別にいるのであれば、そのBという人物から父親に贈与があったものとして認定することもあります。または、その契約をBの契約として認定し、課税関係を決定することもあります。

 

一般的には、保険証券に記載されている契約者が保険料を負担するものと推定しますが、名義変更を数多く行うと、「この保険料は実際に誰が負担していたのか」という関係が複雑になりやすいです。

 

専門のアドバイザーのもと、計画的に実施したいところです。このケースでも、場合によっては「譲渡」ではなく「贈与」とみなされることもありますので取扱いには注意が必要です。

GTAC(ジータック)とは株式会社幻冬舎総合財産コンサルティング(GENTOSHA TOTAL ASSET CONSULTING Inc.)の略称。出版社グループの強みを生かした最先端の情報収集力と発信力で、「中立」「斬新」なサービスを相続・事業承継対策からM&A、国内外の不動産活用といった手法を駆使し、顧客の財産を「防衛」「承継」「移転」するための総合的なコンサルティングを行う。編著・共著に『相続税をゼロにする生命保険活用術』『究極の海外不動産投資』『法人保険で実現する究極の税金対策』『スゴい「減価償却」』(いずれも幻冬舎メディアコンサルティング)など。GTAC公式サイトhttp://gentosha-tac.com/

著者紹介

連載生命保険を活用した「税金ゼロ」の資産移転術

本連載は、2015年6月2日刊行の書籍『生命保険で実現する税金ゼロの財産移転』から抜粋したものです。

本連載は、一般的な生命保険活用スキームを示したものであり、データやスキームの正確性や将来性、投資元本の利回りや運用成果等を保証するものではありません。また、本連載は、2015年4月1日現在の法令等に基づいて作成しており、今後変更される可能性もあります。個別の具体的な法令等の解釈については、税理士等の各専門家・行政機関等に必ずご確認いただくようお願いいたします。掲載されている保険商品のイメージ図につきましては、概算値を表示しています。各スキームの導入時は約款や契約概要、パンフレットを必ずご覧ください。

なお、本連載で示している「契約者」とは、保険料を支出する人で、契約の変更・解約などの権限を持っている人、「被保険者」とは、保険をかけられる人、その対象となる体を提供する人のことをいいます。商品パンフレット等で「逓増定期保険」「長期平準定期保険」といった表記がなされていても、税法上の保険種類とは異なる場合があります。本連載では税法に基づいた保険の名称を採用していますので、ご注意ください。

 

生命保険で実現する 税金ゼロの財産移転

生命保険で実現する 税金ゼロの財産移転

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

所得税、相続税、贈与税・・・財産を移転するだけで多額の税金がかかる日本。しかし、生命保険という「箱」を活用すれば、あらゆる税金を回避しながら資産移転ができるのをご存知でしょうか。 本書では、幻冬舎グループの資産…

 

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧