(※画像はイメージです/PIXTA)

FRBの大幅利上げ方針維持を受け、9月に入って早々と「1ドル140円」の節目を上抜けた米ドル/円相場。こうしたなか、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、9月の米ドル/円も米ドル高・円安の流れが続くとの想定のもと、予想レンジを「137.5~145.5円」としています。どのような分析・考察からこの予想となったのか、詳しくみていきましょう。

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    “上がり過ぎ”懸念高まる…1ドル「145円」の分水嶺

    ちなみに、今後の米ドル高・円安見通しのなかでは、「145円」という水準が大きなポイントになりそうです。

     

    足元では円の「売られ過ぎ」、米ドル「上がり過ぎ」といった行き過ぎ懸念がそれほど強くないため、米金利上昇などに対して比較的素直に米ドル高・円安も反応しています。たとえば、ヘッジファンドなどの取引の目安とされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、先週の段階で4万枚程度の売り越しでした[図表4参照]。

     

    一時の10万枚以上から比べて円売り超しが半分以下に縮小しており、これをみる限り、円安値更新が続いている割には、特に円の「売られ過ぎ」が懸念される状況ではありません。

     

    出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
    [図表4]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2020年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

     

    また、米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は、一時プラス10%以上に拡大しましたが、8月初めにかけて130円まで米ドル急落となったところで、同かい離率もほぼゼロまで縮小。短期的な米ドル「上がり過ぎ」は是正されました[図表5参照]。

     

    その後の米ドル/円上昇再燃で、同かい離率はプラス方向に再拡大となりましたが、足元でもプラス5%程度とまだ米ドルの短期的な「上がり過ぎ」が懸念されるほどではなさそうです。

     

    出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
    [図表5]米ドル/円の90日MAかい離率(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

     

    ただし、このまま米ドル高・円安が続き、仮に145円まで達すると、90日MAかい離率はプラス10%に接近する見通しです。要するに、米ドル高・円安が145円まで達すると、短期的な米ドル「上がり過ぎ」への懸念も高まる可能性があります。

     

    90日MAかい離率を、短期の「行き過ぎ」を確認する目安としているのに対し、中長期の「行き過ぎ」を確認する目安としているのは5年MAかい離率です。米ドル/円の5年MAは足元で111円程度なので、145円まで米ドルが上昇すると5年MAかい離率は3割を超える計算です。

     

    1980年以降で、同かい離率が3割以上に拡大したのは1998年と2015年の2回しかありませんでした[図表6参照]。

     

    出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
    [図表6]米ドル/円の5年MAかい離率(1980年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

     

    したがって、米ドル高・円安が145円まで達するということは、米ドルはすでにみてきたように短期的な「上がり過ぎ」懸念の拡大に加え、中長期的にもこれまでの「上がり過ぎ」の限界圏に接近することになるわけです。このようにみると、145円という水準は、テクニカルな観点から重要な分岐点といえます。

     

    以上を整理しましょう。FRBが大幅利上げの方針を維持し、それを参考にする米2年債利回りに米ドル/円が連れるといった構図が今後も続けば、当面米ドルの下落は限られ、高値を模索する展開が続く可能性が高そうです。

     

    ただ、145円前後になった場合、米ドルは短期的、中長期的ともに「上がり過ぎ」懸念が高まることから、ちょっとしたきっかけでも行き過ぎの反動から米ドル反落リスクが高まりそうです。

     

    さて、米ドル/円の月間値幅は、3月以降の半年間で、実に4ヵ月で8円以上の大幅となるなど、引き続き記録的に高いボラティリティで大きく動く相場が続いています。このため、9月の予想も137.5~145.5円中心で想定しました。

     

     

    吉田 恒

    マネックス証券

    チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

     

    ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

     

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