(※写真はイメージです/PIXTA)

「耳の中はその人の内面を映し出す鏡で、色々なことが分かります」そう語るのは、これまで20年以上に渡り人々の耳を見続け、海外でも診療をしてきた馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・木村至信医師。日本人の耳垢の欧米化や、なぜ毎日耳掃除をしてしまうのか、耳マッサージの絶大な効果などについて解説していただきます。

耳掃除のしすぎで外耳道炎が増加?

今年の夏は猛暑が続いた影響で、耳の中まで痒くなり、耳掃除をしすぎて外耳道炎になってしまった、という患者さんが例年よりかなり多かった気がします。

 

耳の中は、その人の内面を映し出す鏡だと思っています。

 

まず第一に、耳の中はあなたの経済状況を映します。

 

耳の中(外耳道)は内臓に比べ、すぐ命に別状があるわけではなく、構わなければずっと構わないでいられます。耳の中が汚れている方は、経済状態や日常生活に余裕のない方、自分の身なりを気にしない方、子供であればあまり手をかけてもらえていない子に多い気がします。

 

これはもちろん統計調査をしたわけではありませんが、20年以上私が耳鼻科医として多くの人の耳を見続けてきた印象と、8年間毎年フィリピンのスラムでボランティア診療をしてきた経験から感じたことです。フィリピンのスラムではそもそも、耳掃除という習慣すらありません。

 

とはいえ上述の通り、耳掃除のし過ぎはまた新たな弊害をもたらします。では、耳鼻科医が推奨する耳掃除とはどんなものでしょうか?

耳垢も欧米化? 適切な耳掃除の頻度は

耳穴の入り口から鼓膜までの外耳道の距離は、約3cm。外耳道はS字状に曲がった形をしていて、入り口から3分の1の所に耳垢の元となる油を分泌する耳垢腺(じこうせん)があります。

 

日本人の6割は、この腺が少ないためカサカサした耳垢で、4割がベトベトした耳垢、アメ耳と呼ばれるタイプです(昔はカサカサが9割と言われていましたが、耳垢も欧米化してきました)。

 

一般的な耳かき棒が有効なのはカサカサタイプだけで、ベトベトした耳垢は綿棒で拭き取るか、耳鼻科で取ってもらう以外、取ることが困難であることは覚えておいてほしいと思います。欧米人は9割がベトベトタイプなので、欧米ではあまり耳かき棒は売っていません。

 

そして入り口から3分の1のその先、鼓膜に近くなるほど皮膚よりも粘膜に近い構造になるため、強く触れば激痛がしますし、すぐに表面が剥がれてしまうためあまり触らない方が賢明です。

 

以上から、医学的に言えば耳の入り口から1センチ程度を掃除すればよく、しかも週一回で十分です。それ以上掃除をしてしまうと、耳の中が腫れたり耳だれが出る外耳道炎、耳だれにカビが生える外耳道真菌症になってしまうこともあります。これらは難聴を伴いますし、外耳道真菌症は、放置するとカビが全身に悪影響を及ぼす感染症を引き起こしかねません。

なぜ毎日耳掃除をしてしまうのか

それなのになぜ、人は毎日のように耳掃除をしてしまうのか。

 

それは単に「気持ちがいいから」です。耳の穴には、快感を生じさせる迷走神経が走っており、耳かきで触れれば触れるほど気持ちがよくなります。

 

これが耳の中の第二の鏡です。この鏡は、あなたのメンタル状態を表します。

 

やりすぎてはいけないのをわかっていても、気持ちがよくてリラックスできるからやめられない。つまりあなたが疲れていて、癒しを欲している状態だと言っても過言ではありません。少し休息や気分転換が必要かもしれないですね。

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