岸田首相が「アベノミクス」を継承するしかなかった意外な理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

経済政策「アベノミクス」を掲げた第二次安倍政権は、見事に円安・株高を演出し、在任中の日経平均株価は約2.3倍の上昇をみせました。「アベノミクス」とは何だったのでしょうか。日本経済新聞記者の前野雅弥氏が著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)で解説します。

グローバル化は無防備に国を開くことではない

これにより株式市場に一気にマネー(資金)を流入させることが可能になった。12%から25%にまで比率が上昇したと仮定するなら、13%の上昇だ。2019年6月末時点の単純計算で20兆円程度もの資金を新たに株式市場に誘導できるようになったのだ。

 

それだけではない。外国株式のポートフォリオも同時に変更した。こちらはさらに深刻だ。変更前は12%±5%。これを25%±8%にまで引き上げたのだ。これで国民の巨額の年金が国外のマーケットに流出することになった。代わりに比較的、安定した運用先である国内債券のポートフォリオを引き下げ、その分で国内と国外の株式市場での運用比率を高めたわけだ。リスキーだ。

 

このお金は余剰金ではない。将来、確実に発生する国民の老後を保障するための年金だ。決して損失を出すことが許されない種類のお金なのだ。時が来れば庶民の年金として順次、拠出することを求められる。万が一、そのタイミングで株価が暴落、支払うべきお金がなかったとしたら……。誰が責任をとれるのか。

 

しかも足抜けが難しい。これだけ巨額のマネーをいったんマーケットに投じると、もはや撤退はできない。ほんのわずかでも株式を売却すれば、その時点でマーケットがガタガタになってしまう。

 

菅政権はアベノミクスの継承を選択したのではない。選択せざるを得なかったのだ。

 

■令和の「シン鎖国論」とは

 

国内株式はいったんおくとして、海外の株式市場に投じた資金はいずれ巨額の損失を発生させることになるだろう。残念ながら、これに備える必要がある。1日も早く海外への資金流出の門を閉じ、できるだけ国富の流出を最小限にとどめる努力をするべきだ。

 

大切なのは、無防備に国を開くことが「=グローバル化」であるという稚拙な考え方を捨てるべきだ。軍備にしても、財政にしても、経済にしても、それぞれの分野で日本国という形を強固に作りあげることができてはじめて、世界の中で日本の立場が確保できる。
自由貿易を考えるのはそれからでいい。

 

まずは国を閉じ、力を内にしっかりと蓄えることだ。明治の時代に日清戦争と日露戦争に勝利し、世界という舞台に一気に躍り出ることができたのも、江戸時代の鎖国を経たからこそだ。まずはいったん実質的な鎖国体制をとり、国を建て替え建て直す時期なのだ。

 

前野 雅弥
日本経済新聞記者

 

 

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    ジャーナリスト

    1934年、滋賀県彦根市生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京での勤務を経て1977年フリーのジャーナリストに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。政治・経済・メディア・コンピュータなど、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』『大宰相 田中角栄 ロッキード裁判は無罪だった』(講談社)など多数。近著に『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)がある。

    著者紹介

    日本経済新聞記者

    京都府出身。1991年早稲田大学大学院政治学研究科修了、日本経済新聞社入社。東京経済部で財務省、総務省などを担当。金融、エレクトロニクスの取材を経て、産業部エネルギー記者クラブ時代は石油業界の再編、アラビア石油の権益問題などを取材した。著書に『田中角栄のふろしき 首相秘書官の証言』『ビール「営業王」社長たちの戦い 4人の奇しき軌跡』(日本経済新聞出版社)、『負債650億円から蘇った男 アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」』(プレジデント社)。近著に『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)がある。

    著者紹介

    連載令和の時代に田中角栄首相だったら?新「田中角栄論」

    本連載は田原総一朗氏、前野雅弥氏の著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    田中角栄がいま、首相だったら

    田中角栄がいま、首相だったら

    田原 総一朗 前野 雅弥

    プレジデント社

    2022年は、田中角栄内閣が発足してからちょうど50年にあたる。田中角栄といえば、「ロッキード事件」「闇将軍」といった金権政治家のイメージが強いが、その一方、議員立法で33もの法案を成立させたり、「日本列島改造論」に代…

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