海外資産を申告しなかった場合「課せられる」もの
国税庁は国民の資産を把握できるようにOECDのCRSという仕組みや各国との租税条約で環境を整えていますが、さらに国民へ海外資産を申告するよう求めています。
国税庁は、5,000万円以上の資産を海外で保有している場合、国外財産調書の提出を義務付けています。国外の資産として挙げられるのは、預金や有価証券、不動産、保険の解約返戻金、外国法人への貸付金や出資金などほぼすべての資産が対象となります。
国税庁は国外財産調書の提出を促進するため、罰則を強化しています。国外財産調書を未提出、または提出漏れがあった資産から収益があった場合、加算税が課せられます。
また、税務署から資産取得についての詳細な書類や収益の証憑などの提出を求められても提出しなかった場合、悪質とみなされさらに加算税が課せられることになります。
2019年には国外財産調書の未提出により告発をした実績があることから、国税庁は日本人の海外資産について取り締まりを強化していることがわかります。
「海外の口座で資産を管理する際」気をつけたいこと
日本のカントリーリスクを回避するための資産回避先としても、為替の影響を受けづらい資産形成の方法としても、海外の銀行口座や証券口座で資産を管理するのは資産形成の方法として有効な手段です。
ですが、それを利用した脱税はもちろん許されません。日本に居住している限り、日本の資産であろうと海外の資産であろうと、その資産からもたらされた収益への課税は避けられません。毎年の確定申告では、収益を漏れ抜けなく申告しなければなりません。
海外の銀行口座や証券口座で資産を管理するのであれば、資産を隠すためではなく、有効な資産形成の手段と捉えて取り組まれることをオススメします。
仮に現時点では脱税できているとしても、いずれはバレてしまい、取得時期まで遡り収益に対して多額の加算税と延滞税の請求をされることになります。日本国内の金融機関であれば特定口座があり、簡単に確定申告ができる仕組みがありますが、海外の金融機関にはそのような仕組みがなく、自分で収益の証憑を取得し確定申告する必要があります。
面倒かもしれませんが、海外の資産だからこそ漏れ抜けを入念に確認し、確定申告をされることをオススメします。
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次回は「景気後退局面での投資」について解説します。
村上 年範
クレディ・テック株式会社 代表取締役