(※写真はイメージです/PIXTA)

世界の「100年企業」約8万社のうち、約4割が日本企業。日本は世界一の企業長寿国です。しかし近年では、後継者不在に悩む経営者が少なくありません。後継者不在のために優れた企業が廃業となるのは、なんともつらいことですが、そもそもなぜ、後継者が見つからないのでしょうか。理由を見ていきます。

第三者承継はハードルが高く、断念するケースも…

2つめの要因として、第三者承継のハードルの高さがあります。同族承継が減っている代わりに第三者への承継が増加傾向にあると述べましたが、同族承継に比べて第三者承継が簡単だというわけではありません。

 

★ハードル① 資金面

まず資金面でのハードルがあります。第三者承継の場合は、承継先が社内の者であっても社外の者であっても自社株式を譲渡することが原則となるため、自社株を買い取るだけの資金力が後継者にないと承継が難しくなります。

 

子や孫への承継の場合は自社株は相続財産になるため、相続税の特例や納税猶予などを使えば譲渡のハードルを下げることができるのですが、第三者の場合はそういうことができません。種類株式を使って「経営権のある株式」だけを第三者の後継者に譲渡し、「経営権のない株式」を社長がもっておく方法もありますが、それでも一部は買い取らなければならず後継者はそれなりの資金が必要です。

 

また、社長が個人保証で会社の借り入れをしているケースで、後継者がその個人保証債務を引き継ぐことに難色を示すこともあります。

 

★ハードル② 他人が後継者となって暴走することを恐れる

2つめのハードルとしては、他人が会社を継ぐことで経営方針や理念が変わってしまったり、社員が解雇されてしまったりするリスクがあります。血縁があれば会長として会社に在籍し、後継者が暴走しそうになったら手綱を締めて軌道修正するということも可能ですが、後継者が他人の場合はそういうことをすると嫌がられます。後継者は株主総会を開いて会長を解任することもできるのです。

 

後継者が暴走するのとは反対に、社員のほうが第三者の後継者の言うことを聞かなくなるケースもあります。社員が仕事をしてくれないために事業が停滞したり、後継者が社内で孤立してメンタルヘルスの問題に発展したりする事例が実際にあります。

 

★ハードル③ 第三者承継に対する社長自身の抵抗感

3つめのハードルとして、第三者承継に対する社長自身の抵抗感があります。近年人気が高まっているM&Aは第三者に会社を買い取ってもらう手法ですが、中小企業ではまだまだ抵抗感が強くあります。

 

東京商工会議所の「事業承継の実態に関するアンケート調査」ではM&Aに対するイメージについて調べています。「良い手段だと思う」と答えた社長は4割にとどまり、「良い手段だと思わない」「よく分からない」が6割となっています。

 

M&A業界では買い手の需要は高いのですが、売り手の供給不足というアンバランスが起きています。その理由としては、「会社を売ることで周りの人になんと言われるか分からない」という想いから躊躇してしまいます。どうしても「身売り」のイメージが強く、「第三者への会社売却は恥ずべきこと」という意識があります。

 

若い社長より高齢社長のほうが抵抗感は根強いようです。

 

実際には友好的なM&Aも多く、M&Aをきっかけに事業発展していく会社も多いのですが、「知らない」「よく分からない」という社長が少なくないのです。

 

 

阿部 忠

ホッカイエムアイシー株式会社会長
ユーホープ株式会社代表取締役
埼玉県経営品質協議会顧問
中国江西省萍郷衛生職業学院客員教授
埼玉キワニスクラブ顧問
エコステージ経営評価委員
日本賢人会議所会員

 

一般社員を1年で後継者に成長させる人材育成術

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阿部 忠

幻冬舎メディアコンサルティング

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