中小企業の生命力を高め、寿命を飛躍的に伸ばす〈両利きの経営〉とはなにか? (※写真はイメージです/PIXTA)

企業の長期的な存続は、「これまでの成功事業」と「将来のための新規事業」の併存なしにはありえません。通常は大企業の経営を想定する「両利きの経営」ですが、実際には中小企業においても有効なのです。ここでは、中小企業の長期的な存続を見据えた企業運営のポイントを解説していきます。※本記事は『中小企業の両利きの経営』(ロギカ書房)を抜粋・大幅に再編集したものです。

中小企業として取り組むべき4項目

両利きの経営は、「両利きとなるための4つの要素」を挙げています。それらを踏まえた上で、中小企業として取り組むべき4項目について以下に説明します。実践にあたっては、リーダーシップの発揮がポイントとなります。

 

①戦略の策定

葛藤が生じやすい新規事業と既存事業のメンバーが前向きに協力するためには、両者の納得できる説明が必要です。全体戦略との整合性、既存事業の資産を活かした競争優位性などに着目して戦略策定と提示を行い、理解を得ることが重要となります。

 

②両利きの組織設計

経営学において”両利き”という言葉が最初に使われたのは、1976年、ロバート・ダンカンの研究論文であり、下記の「①連続的な両利きの経営」が想定されていました。その後の多くの研究により、「両利きの経営」分類として下記の3つが存在します。

 

ⅰ 連続的両利きの経営

既存事業が軌道に乗った段階で、「深化」のモードから「探索」のモードへ連続的に切り替えていく方法です。通常業務を営みながらイノベーションに同時並行で取り組むことになります。

 

ⅱ 構造的両利きの経営

サブ組織を設けて、「知の探索」と「知の深化」のそれぞれに適した経営資源(研究開発の部署など)を配置する方法です。

 

ⅲ 文脈的両利きの経営

個人に知の探索行動と深化行動を取る権限を与え、個人の裁量権に任せることで達成する取り組みです。グーグルの20%ルールは、これに該当します。

 

中小企業が両利きの組織運営を考えるにあたっては、ⅱのような「別組織の設置」は困難なケースが少なくないと想定されます。新規事業の目標や要員規模を考慮して、ⅰあるいはⅲの採用や組合せなど、最適な方法を取り入れていくことがよいでしょう。

 

③経営者の支援・管理

葛藤が生じやすい探索チーム、深化チームの両方を有効に機能させるため、リーダーは、それぞれと十分なコミュニケーションを取って議論を行い、管理していく必要があります。対立が生じた際には、それにしっかりと向き合い、目標に向かって両チームが前向きな解決を図っていけるよう導いていくのです。特に圧力をかけられやすい探索チームを支援していくことが重要です。

 

④共通ビジョン

探索チーム、深化チームのメンバーが積極的に協力、前進するためには、頭で理解するだけでなく、熱意を持って行動することが重要です。両者の心に訴える共通のビジョンや目標を策定、浸透させることは、既存資源を共有して社員が一丸となって前進するのに有効です。

「中小企業ならではの強み」に目を向ける

一般的に、中小企業の「両利きの経営」における最大の制約は、限られた経営資源にありますが、一方で、中小企業ならではの強みも多く存在します。

 

規模が小さいため、経営者が社員とコミュニケーションを取りやすく、リーダーシップを発揮しやすい環境にあります。

 

企画から意思決定、実行までの時間は短くて済みます。

 

また、中小企業の経営者は株主でもあることが多く、経営者の在任期間が長いため、長期にわたって一貫性のある意思決定を行うことができます。

 

更に、目指す市場の規模が小さくても事業が成立しやすくニッチ分野に参入しやすい点もメリットとなります。

 

こうした強みに目を向け、新規事業の取り組みをぜひとも前へ進めていきたいところです。

 

 

五藤 宏史
五藤コンサルティングオフィス 代表
中小企業診断士

 

事業承継支援コンサルティング研究会
 

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    五藤コンサルティングオフィス 中小企業診断士

    1987年 早稲田大学大学院・理工学研究科修了後、キヤノン(株)に入社。海外企業との協業によるプリンター開発、製品プロジェクトマネジメントに多数携わった。製品コンセプト立案・設計から量産立上げまでを手掛けた(プロジェクトマネジメント2製品は社長賞受賞)。2015年に中小企業診断士登録。2020年に五藤コンサルティングオフィスを開業。経営戦略・事業計画策定、創業支援、製品開発、マーケティング等が専門。現在、コンサルティング、研修講師、執筆活動等を行っている。

    五藤コンサルティングオフィスWEBサイト:https://goto-consult.com/

    事業承継支援コンサルティング研究会WEBサイト:https://jigyohikitsugi.com/kenkyu/

    著者紹介

    事業承継コンサルティング株式会社 

    「事業承継支援コンサルティング研究会」は事業承継コンサルティング株式会社が運営する、東京都中小企業診断士診断士協会認定の組織。弁護士・税理士などの士業、ファイナンシャルプランナー・銀行員・証券営業マン・生命保険セールスパーソンに対して事業承継支援スキル向上のための教育プログラムを提供している。

    運営している事業承継コンサルティング株式会社は中小企業診断士と公認会計士を中心とするコンサルティング会社。事業承継やM&Aのコンサルティング業務だけでなく、認定経営革新等支援機関として、事業承継税制(経営承継円滑化法の贈与税の納税猶予制度)や、ものづくり補助金、事業再構築補助金、経営資源引継ぎ補助金など申請サポートの実績が多数。

    事業承継支援コンサルティング研究会WEBサイト:https://jigyohikitsugi.com/kenkyu/

    著者紹介

    連載経営者必読!中小企業「両利きの経営」の極意

    本連載は事業承継支援コンサルティング研究会の著書『中小企業の両利きの経営』(ロギカ書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

    中小企業の両利きの経営〈未来を創る10の視点〉

    中小企業の両利きの経営〈未来を創る10の視点〉

    事業承継支援コンサルティング研究会

    ロギカ書房

    未来を創る10の視点――「既存事業の深掘り」「新規事業の探索」中小企業だって“両利きの経営”を実践できる! 本書は、東京都中小企業診断士協会認定「事業承継支援コンサルティング研究会」における「第2回書籍出版プロ…

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