(※写真はイメージです/PIXTA)

世界有数の医療先進国でありながら、病気になる前に予防する「予防医学」の浸透が遅れている日本。なぜ、日本人の予防意識が高まらないのか。その大きな要因として挙げられるのが「国民皆保険制度」です。治療費の自己負担が少ないのは大きなメリットですが、「病気になったら治せばいい」という考えで医療に依存するのは危険です。予防意識を高めるため、本稿では「国民皆保険制度」が抱えるリスクや弱点について見ていきましょう。歯科医師の金子泰英氏が解説します。

医療費を減らすには「予防」が重要だが…

【国民皆保険制度の弱点①予防治療には適応しない】

世界から高い評価を得ている日本の国民皆保険制度ですが、実はいくつかの弱点があります。高騰する医療費を減らして国民皆保険制度を維持するためには、一人ひとりが病院にかかる機会を少なくすることがポイントとなり、そのために予防が重視されています。

 

しかし、国民皆保険制度では、予防治療は保険適応範囲外となっています。国民皆保険制度は治療がメインであり、治療病名がついていないと保険治療が成り立たないのです。そのため、国を挙げて病気の予防を推進しているにもかかわらず、予防がおろそかになってしまうという矛盾が生じてしまいます。

 

皆さんも風邪をひいたときは病院に行きますが、風邪予防のために病院には行かないでしょう。風邪を予防するためには「高濃度ビタミンCの点滴」などの予防治療は存在するのですが、保険治療が当たり前になっている日本ではあまり知られていないのが現状です。

「3時間待ちの末に診療時間はたったの3分」は当然

【国民皆保険制度の弱点②病院の経営維持のため混雑する】

病院に行くと混雑していて、何時間も待たされるという経験をしている人は多いと思います。長く待ったにもかかわらず、診療時間は短く、「待ち時間は3時間で診療は3分で終わった」という話もよく聞きます。なぜこんなことが起こるかというと、実は国民皆保険制度が原因の一つでもあるのです。

 

医療の診療行為は内容によって保険点数が国から定められており、一点を10円で計算しています。例えば200点の診療だと、×10円で2000円が医療費になります。そして、患者の負担割合は、加入している保険の種類や年齢によって異なりますが、2割負担だと400円、3割負担だと600円が患者の支払う金額となります。残りの医療費は加入している健康保険組合から医療機関に支払われるという仕組みです。

 

国民皆保険制度のおかげで、患者側は平等に低負担で医療を受けられる一方、病院側は保険点数が決まっていることにより、患者をたくさんさばかないと経営が成り立たないという面があります。そのため、ひどい混雑状態でも患者を受け入れざるを得ないという面があるのです。

 

そして、一人ひとりを長時間診察していたのでは多くの患者をさばけず、診療時間がどうしても短くなってしまうため、先ほど述べた「待ち時間は3時間で診療は3分」ということが起こるのです。

 

さらに、病院では最新の治療機器を導入するなど設備投資も必要です。自由診療の病院であれば料金を自由に決められるため、最新の治療機器に対する料金は治療費に含めることができます。その分患者はレベルの高い医療を受けられるのでお互いにメリットが生まれます。しかし、保険診療の場合、点数で料金が決まっているので、どうしても人数をさばいて点数を上げないと、設備投資の費用が回収できなくなるのです。

次ページ「受けなくてもいい治療」で診療報酬を稼ぐ病院も

※本連載は、金子泰英氏の著書『予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

金子 泰英

幻冬舎メディアコンサルティング

「病気になったら治す」では、気づかぬうちに病魔が進行していることも…。 病気は「治す」時代から「予防する」時代へ! 医療技術の進歩がめざましい今、欧米を中心とした先進国では「予防医学」が着目されるようになって…

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