(※写真はイメージです/PIXTA)

健康寿命を延ばすためには病気にならないことが必須であり、そのためには自身で病気を予防することが欠かせません。しかし日本は、世界有数の医療先進国でありながら、病気になる前に予防する「予防医学」の浸透が遅れています。日本と海外との予防意識の差は、日本人にどんな結果をもたらすのか。歯科医師の金子泰英氏が解説します。

スウェーデンと日本の「治療費負担システム」の差

スウェーデンは、1970年代頃までは歯周病で歯を失う人が非常に多い国でした。そこで国全体でシステムを変え、19歳までは歯科の予防と治療は無料、それ以降は治療に関しては自費負担にしたのです。このシステムのおかげで、予防王国といわれるほど人々の予防意識が向上し、スウェーデン人の虫歯は減りました。幼い頃から、どうすれば虫歯にならないか、どうすれば歯周病になりにくいかを叩き込まれて、結果として生涯を通しての治療費負担を軽減するライフスタイルが定着したのです。

 

日本もこのシステムを踏襲すれば歯科の医療費は減るはずです。さらに歯科だけではなく、歯周病から付随する病気も減って、医科の医療費も減ることが予測されます。

 

日本ではテレビで「この食べ物が血圧を下げる」と流れると、次の日にはスーパーからその食材がなくなってしまうといったことが起こるほど、一般的な健康意識は高いように思われます。しかし、先に挙げた「通院目的」のグラフを見ても、歯に対しては、それほど敏感ではないようです。スウェーデンのように国を挙げて予防をするぐらいでないと、予防意識の向上は見込めないのかもしれません。

 

かつて私自身、当時指導を受けていた先生から「日本はスウェーデンから20年遅れている」と言われたことがありますが、「日本は先進国で医療技術もしっかりしているのだから、そんなわけはない」と思っていました。その後スウェーデンに行って歯周病の勉強をした際に、「日本が20年遅れているのは本当だ」と実感したのです。先生が言っていたのは、日本は改革が行われる前の、1970年代のスウェーデンと同じように予防歯科の意識が低い、という意味だったのです。保険診療で虫歯の治療をするのも大切ですが、一方でしっかりと歯の大切さを教え、予防意識を高め、歯磨きの仕方から直していかなければまた虫歯ができますし、歯周病も治らないということを痛感したのです。

 

日本でも保険診療の範囲で予防歯科に取り組んでいる歯科医はいますが、そうするとなかなか経営が成り立ちません。そのため、日本では予防歯科が普及しないという問題もあるのです。

 

私は開業してから20年以上歯科医師として勤めていますが、この先も予防中心の保険制度に変わることはないと思ったため、約10年前に自由診療のみに切り替えました。

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    ※本連載は、金子泰英氏の著書『予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

    予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

    金子 泰英

    幻冬舎メディアコンサルティング

    「病気になったら治す」では、気づかぬうちに病魔が進行していることも…。 病気は「治す」時代から「予防する」時代へ! 医療技術の進歩がめざましい今、欧米を中心とした先進国では「予防医学」が着目されるようになって…

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