ロシアが「クリミア併合」で実践したサーバー戦の新しい戦い方 (※写真はイメージです/PIXTA)

ロシアが実際にサイバー戦の重要性を証明した例があります。2014年にロシアとウクライナがクリミア半島の領有権を争った「クリミア併合」です。どんな戦いが行われたのでしょうか。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

サイバー空間では仁義なき戦いが

■民主主義国家も敵になる場合がある

 

日本を攻撃するのは、中朝のような“敵性国家”ばかりとは限らない。『サイバーアンダーグラウンド』(吉野次郎著 日経BP刊)によれば、フランスの「対外治安総局(DGSE)」に属するサイバー部隊は、他国の自動車産業や製薬メーカーへのハッキングで産業機密を盗み出し、自国企業に提供しているという。

 

これが事実なら、フランス政府がトヨタやホンダの技術を盗み出し、ルノーやプジョーを支援していることになる。同書では、あまりの節操のなさにDGSEが世界の諜報機関から“西側の中国”と揶揄されているとも指摘している。

 

まさに「仁義なき戦い」だ。第一次世界大戦の終結後に「今後の英国の敵は?」と問われたウィンストン・チャーチル首相は「我が大英帝国以外のすべての国だ」と答えた。ときを超えて、電脳の世界にもまさにこの言葉があてはまる。

 

ランサムウェア攻撃に対しては国際的な連携が不可欠である。とくに民主主義対専制主義の対立の時代においては、少なくとも民主主義陣営内での団結と協力が不可欠だ。

 

しかし、最近のデンマーク・ラジオによると、デンマーク情報機関(FE)は、米国の国家安全保障局(NSA)と協力し、ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー各国の政府首脳の情報を集めていたという。民主主義諸国間のサイバー空間での仁義なき戦いがなされている事実は問題である。この問題も含めて米国には適切な行動を求めたい。

 

渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監

 

 

↓コチラも読まれています 

ハーバード大学が運用で大成功!「オルタナティブ投資」は何が凄いのか

富裕層向け「J-ARC」新築RC造マンションが高い資産価値を維持する理由

 業績絶好調のジャルコのJ.LENDINGに富裕層が注目する理由 

コロナ禍で急拡大!トラックリース投資に経営者が注目する理由

  「給料」が高い企業300社ランキング…コロナ禍でも伸びた会社、沈んだ会社

あなたにオススメのセミナー

    前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
    元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
    元陸上自衛隊東部方面総監

    1978(昭和53)年、東京大学卒業後、陸上自衛隊入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、函館駐屯地司令、東京地方協力本部長、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011(平成23)年に東部方面総監。2013年退職。著書に『米中戦争―そのとき日本は』(講談社現代新書)、『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)、『日本の有事』(ワニブックス【PLUS】新書)、共著に『台湾有事と日本の安全保障』『現代戦争論―超「超限戦」』(ともにワニブックス【PLUS】新書)がある。

    著者紹介

    連載日本はあらゆる領域が戦場になる戦時下である

    本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    日本はすでに戦時下にある

    日本はすでに戦時下にある

    渡部 悦和

    ワニブックス

    中国、ロシア、北朝鮮といった民主主義陣営の国家と対立する独愛的な国家に囲まれる日本の安全保障をめぐる状況は、かつてないほどに厳しいものになっている。 そして、日本人が平和だと思っている今この時点でも、この国では…

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    登録していただいた方の中から
    毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
    TOPへ