(※画像はイメージです/PIXTA)

筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきかを記しています。発達障がいは治療ができない難病ではありません。本記事では、その治療について、実例をもとに解説していきます。

問診表を見て、医師が下した診断は…

ADHD問診票を見ると、母親の方は、不注意型、多動・衝動型のいずれの項目も9項目中、6項目にチェックがありました。担任の方は、不注意型、多動・衝動型いずれも9項目すべてにチェックがついています。

 

不注意型、多動・衝動型の診断基準となる6項目以上のチェックが両方ともあったので、ADHDの混合型と診断しました。親御さんはどうやらDRCを実践してくれたようです。

 

ご褒美は鉛筆を買うことで、特別な高得点の場合はオモチャを買うことだったようです。今まで裸足だったのが、靴下を穿(は)き上履きも履くようになるなど成果は見事に出ているそうです。

 

初診の時に行った問診票の結果や外来におけるジグソーパズルを綺麗に並べて遊ぶなどの行動観察から、G君は自閉スペクトラム症+ADHDであると告知しました。

 

そして、ADHDに対して治療を開始したのです。すると、学校では3時限目から少しおとなしくなることが多くなり、他人に対するちょっかいも減りました。まだ突然大声を出すことはあるものの、多少の効果は見られました。

 

そこで予定通り薬を増量していきました。

「最近調子はいかがですか?」…母親は笑みを浮かべた

小学2年生になりました。算数と国語は相談教室で兄と一緒に他のお子さんを含めて3人で学習することにしました。

 

まだ授業中ちょっかいを出したり、奇声をあげたり、同級生を叩いたりすることも少なからずあり、夕方になると担任からクレームの電話がかかってくることも度々あったようです。それでも母親は辛抱強く薬を飲ませ続けました。

 

すると、学習の面で変化が見られ始めました。ひらがなの読み書きができるようになったのです。また、今まで自分で連絡帳を書かずに、友人が書いてくれていましたが、4月下旬からは自分で書くようになりました。やっと効果が出始めたので薬の量を増量していきました。

 

それから2ヵ月が経ちました。

 

「最近調子はいかがですか」と診療に訪れた母親に聞くと、笑みが浮かんだのです。

 

「朝方、やや眠いようで起きるのは遅いのですが、起きてからの行動がスムーズで、遅刻せずに登校しています。宿題は自分でやるようになりました。そして、兄と宿題をどっちが早く終えられるか張り合うようになりました。それから学校からのクレームの電話がなくなったんです。それだけで生活がラクになったんですよ。他にも、前髪を気にしたり、給食の割烹着は似合わないから嫌などと言ったりして少し色気づいてきたようです」

次ページ学校でも泣かなくなったようだが「心配ごとが一つ」

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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