(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年8月3日に公開したレポートを転載したものです。

アベノミクスの成果②…企業収益と税収の劇的改善

しかしより大きなアベノミクスの成果は企業の収益であろう。2000年から2010年そしてアベノミクスが始まる2012年まで40兆円台で推移していた法人企業の経常利益はアベノミクスが終わる2019年度に71兆円、2021年度には87兆円と倍増している。

 

[図表4]日本企業の売上高経常利益率 (経常利益48.5兆円⇒71.5兆円⇒86.7兆円)
[図表4]日本企業の売上高経常利益率(経常利益48.5兆円⇒71.5兆円⇒86.7兆円)

 

また、政府の財政バランスも大きく改善した。プライマリー財政政バランスはアベノミクスが始まる直前-8.2%であったものが安倍政権が終わるときには-2.9%と約6ポイント上昇した。2度にわたる消費税増税と景気の拡大による所得税の増加が大きく寄与した。

 

注目すべきは税収の顕著な増加である。2012年度の日本の一般会計税収は44兆円であったが2019年度は58兆円、2022年度の予算では65兆円と、10年前比5割増となっている。

 

[図表5]大きく改善したプライマリー財政収支 (12年末▲8.2%⇒19年末▲2.9%)
[図表5]大きく改善したプライマリー財政収支(12年末▲8.2%⇒19年末▲2.9%)

 

[図表6]一般会計税収の推移(財務省) (12年44兆⇒20年61兆、22年(予)65兆)
[図表6]一般会計税収の推移(財務省)(12年44兆⇒20年61兆、22年(予)65兆)

 

年金財政の顕著な改善、運用益20兆円から100兆円に

さらに年金財政が運用益の増大により大きく改善した。

 

公的年金基金(GPIF)の直近2021年度末の運用資産は197兆円、これに対して105兆円が累積運用収益である。2012年度末のGPIFの運用資産は120兆円、対する累積運用益は25兆円であった。

 

2013年以降アベノミクスによりGPIF改革がなされてから今日までの運用資産は77兆円増加、累積運用益は80兆円増加であったから、年金財政の改善はもっぱら運用益の増加であったことが瞭然である。

 

[図表7]GPIF累積収益額(年金積立金管理運用独立行政法人)
[図表7]GPIF累積収益額(年金積立金管理運用独立行政法人)

 

なぜこれほどの運用収益改善が可能になったかといえば、そのすべてはアベノミクスの成果といえる。

 

GPIFのポートフォリオを概観すると、2012年には62%と過半を占めていた国内債券が24%に引き下げられ、その部分を国内株式(15%→24%)、外国株式(12%→25%)、外国債券(10%→24%)にシフトさせた。

 

2012年度末から2021年度末への累積運用収益増加額80兆円の内訳は国内株式27兆円、外国株式41兆円、外国債券9兆円となっており、2013年のGPIF改革(基本ポートフォリオの見直し:国内債券を60%±8%から35%±10%へ)が決定的に影響していたことがわかる。

 

これと軌を一にし、日銀はGPIF、民間金融機関、郵貯の持っている国債を量的金融緩和によって大きく肩代わりした。日銀の国債保有比率は2012年末の11%から2020年末には48%へと上昇した。リターンを生まない、もしくは含み損になりかねない国債を日銀に肩代わりさせることで、GPIFや民間金融機関の資金運用が大きく自由化し、高い運用収益が可能になったのである。

 

[図表8]日本国債投資主体別保有比率 (12年:日銀11%、民間+公的74%⇒20年:日銀48%、民間+公的38%)
[図表8]日本国債投資主体別保有比率
(12年:日銀11%、民間+公的74%⇒20年:日銀48%、民間+公的38%)


このように株が上がって運用益が劇的に高まっても、富裕層が報われているだけで庶民は幸せになっていないと喧伝する向きが多いが、それもまったく的外れである。

 

注目のセミナー情報

【国内不動産】4月25日(木)開催
【税理士が徹底解説】
駅から遠い土地で悩むオーナー必見!
安定の賃貸経営&節税を実現
「ガレージハウス」で進める相続税対策

 

【資産運用】5月8日(水)開催
米国株式投資に新たな選択肢
知られざる有望企業の発掘機会が多数存在
「USマイクロキャップ株式ファンド」の魅力

次ページアベノミクスで「幸福実感」が高まったといえるワケ

本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧