【広報の営業戦略】テレビに受けるネタ提案。大事なのは「つかみ」、「臨場感」 (※写真はイメージです/PIXTA)

商品やサービスを一般消費者に向けて提供する「B to C(Business to Consumer)」企業と異なり、法人に向けて事業を行う「B to B(Business to Business)」企業は、マスコミへの営業が有利ではありません。日本経済新聞の記者から「B to B」企業広報に転身した日高広太郎氏の著書『BtoB広報 最強の攻略術』(すばる舎)で効果的な戦略を解説します。

テレビへの広報営業、私の体験

私もBtoBの中小企業の広報を任されていたため、どうやったら自社をテレビに出演させられるかを考え、工夫してきました。私が担当になる前はほとんどテレビで取り上げられたことはなかった会社だったため、人脈もほとんどありませんでした。

 

藁をもつかむ気持ちでテレビ局に勤務している友人に連絡を取り、関係者を紹介してもらったこともありますが、「面白いんですけど、御社はBtoBの中小企業だから視聴率が……」「何かあった時には取材させてもらいます」といった反応でした。もちろん「何かあった時」がくることはありませんでした。

 

記者やプロデューサーの方々はとても丁寧な対応をしてくれ、今も感謝していますが、無名かつ業界1位でもない、テレビCMも出稿する気のないBtoB企業を取り上げてくれるようなテレビ局はありませんでした。広報担当になった当初の私は、テレビ出演についてはまさに「箸にも棒にも掛からない」状況だったのです。

 

ただ、私が広報を担当してからは、自社についてテレビ以外の多くのメディアに記事を取り上げてもらえるようになりました。それだけ一般の方々にも、メディアの人たちにも知名度が上がったことになります。すると、こうした新聞、雑誌、インターネットのニュースサイトなどの記事群を読んで、テレビ局の記者やプロデューサーが、「自分が制作する番組の企画で取材したい」「企画づくりの相談に乗ってほしい」という連絡を向こうからしてくれるようになったのです。

 

私はこうした記者やプロデューサーからの依頼に積極的に協力し、社内でも事情を説明した上で、社長をはじめ、会社をあげて情報提供に協力してもらいました。記者らと一緒に企画のストーリーを作り、背景説明のための情報を提供しました。気をつけたのは、単に情報提供をするのではなく、この情報やニュースがどんな社会問題の解決や社会貢献につながるのかという視点で伝えることでした。自社以外の企画づくりのネタ探しについても、積極的に協力し、取材先を見つけて記者に連絡しました。

 

紆余曲折はあったものの、結果としてはNHKの最も視聴率の高いニュース番組で、自社の社長のコメントを取り上げてもらうことに成功しました。私が広報担当になってから9ヵ月がたっていました。

 

番組の放映後に、記者の方から「時間の制約のために御社の社長コメントが削られそうになったが、日高さんからここまでお世話になっていたから、上司に直訴してコメントを死守しました」という裏話を聞かされました。私は記者に大変感謝するとともに、広報の仕事も記者と同様、人とのつながりや信頼関係で成り立っているのだと思い知らされました。

 

この時、私や自社の人たちがそこまで報道に協力していなければ、記者の方も上司に反抗してまで、私の会社の社長コメントを守ろうとはしてくれなかったでしょう。その時の記者の方が誠実な人柄だったことも幸いでした。

 

この報道を皮切りに、年に数度は、ニュースや社長インタビューなどを民放も含めてテレビで取り上げていただけるようになりました。もちろん広告ではなく、あくまで報道ですので、1円たりともお金は支払っていません。私がくる前には何年もテレビに取り上げてもらえていなかったわけですから、BtoBや中小企業でもやればできるのだと思います。

 

もっとも、私の場合はテレビに自社を出演させたいからといって、すべての記者やプロデューサーの要請に協力しているわけではありません。メディアの要請の中には、最初から取材のテーマがあって、それに合わせたエピソードがほしいというケースもあります。ただ、そのテーマが誤解を含んでいたり、それを放送してしまえばかえって社会に間違った認識を生んでしまうと予想されるような企画があったりします。

 

こうした場合、私はまずは連絡してきた記者の誤解を解くように努力していました。メディアの方々は、自社とはほかの業界に属しているわけですから、最初は記者が誤解していても仕方がない面があります。私は、記者が誤解しているなと思った場合は、多くの情報などの根拠を示して誤解を解くようにしました。偏った内容の場合は、抑えとして別の見方も入れるようにお願いします。そうすると、記者の方は企画自体をやめる場合もありますし、修正してくれることもあります。

 

一方で「日高さんが言っていることはよくわかりますが、上司がそういうテーマでやれと言っているので」と別の企業に取材に行く場合もあります。メディア露出を増やしたい私にとっては非常に残念ですが、間違った情報や誤解を世の中に出さないようにするのも企業広報の役割だと私は思っています。

 

特にテレビや新聞の影響力は非常に大きいだけに、一度誤解を招く報道があれば、なかなかそれを覆すことはできません。単にテレビに出たいからと大げさな情報を出したり、テレビ局におもねるような行動を取ったりすることは、企業広報としてやってはいけないことだと認識すべきです。

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    広報コンサルティング会社 代表 

    1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京社会部に配属される。ドラッグストアなど小売店担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた動きや企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証一部上場企業に入社し、広報部長、執行役員等を務める。現在は独立し、広報コンサルティング会社の代表を務める。

    著者紹介

    連載メディアに注目されにくい「BtoB企業」のメディア露出を、劇的に増やす方法

    BtoB広報 最強の攻略術

    BtoB広報 最強の攻略術

    日高 広太郎

    すばる舎

    日本経済新聞社のエース記者として活躍し、東証一部上場の「BtoB企業」の広報担当役員に転身、年間のメディア掲載数を就任前の80倍以上に増やした広報のプロフェッショナルである著者。現在は独立し、広報コンサルティング会社…

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