日中国交正常化後、円借款が怪物・中国を育てていた皮肉な現実

対中円借款による経済インフラ整備等を通じた中国の安定的発展は、日中の民間経済関係の発展に大きく寄与しただけではなく、中国経済を支える役割もあり、円借款が怪物・中国を育てたという面もあります。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

なぜ日本人はココム規制に鈍感なのか

■COCOMとCHINCOM

 

かつて共産圏に自由主義圏の軍事に転用できる技術が流出しないための規制をする委員会、対共産圏輸出統制委員会(COCOM)と対中国輸出統制委員会(CHINCOM)がありました。COCOMは共産主義諸国が対象で、CHINCOMは中国が対象です。両者の禁輸品目はほぼ重なっていました。

 

まずCOCOMが発足しました。1949年のことです。その後、1952年に中国の朝鮮戦争への本格的介入を機に、CHINCOMが組織されました。発足当初はCOCOMより厳しい適用が行われていましたが、欧米諸国の対中貿易の拡大に伴い、1957年にはCOCOMに吸収、一本化されています。

 

米中国交正常化(1979年)以降は、とくに中国に対して甘かった印象があります。例えば、私が『日本経済新聞』の外務省担当だったから、1980年頃のことです。IBMの大型コンピュータは本来なら対共産圏禁輸品目です。ところが中国向けに関しては、平和利用に限定すればよろしいということで、アメリカは対中輸出を許可しました。一方で、ソ連向けは厳しいわけです。

 

これは所謂アメリカの「対ソカード」としての対中関係から始まり、関与政策(=エンゲージメント政策)に至る流れでしょう。

 

関与政策とは、中国の経済力の増強を認めて対中貿易・投資を進める。それを通じて、アメリカの価値観が支配する国際社会に取り込み、中長期的に中国国内体制の変化を促進しようとする政策です。

 

先のIBMのコンピュータについては、中国が「石油探査のための計算に必要だから輸入したい」とIBMに引き合いを出して、IBMがアメリカ政府に相談するわけです。それを受けてアメリカ政府が「こういう条件がきちんとクリアされるならよろしい」と、中国に対しては緩和が始まっていたのです。この流れがオバマ政権まで続きました。

 

ただアメリカはハイテクに関する輸出規制のベーシックなところは護持しています。それは日本にだって絶対に出しません。国家安全保障の根幹に関わることですから、普通の国であれば当然のことです。

 

対して日本はそういう意識が希薄です。「アメリカがやってるから仕方ない」という感じで輸出規制をする。自ら率先して規制することはありません。ひょっとしたら、輸出規制をやって中国ににらまれるのが怖いということがあるかもしれません。

 

残念ながら日本には外交力がありませんから、「アメリカが動くから大丈夫」といった言質を絶えず取っていないと、手も足も出ない。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

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    産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

    1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

    著者紹介

    連載日本人の給料が25年間上がらない残念な理由

    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

    「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

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    田村 秀男

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