(※写真はイメージです/PIXTA)

先が見えないロシアのウクライナ侵攻、中国の新型コロナ再拡大による経済的ダメージなど、世界情勢は不穏な状況が続いています。当然、日本の富裕層たちも資産防衛に手を尽くしていますが、いまや国内での資産組み換えや、外貨預金程度で対処するのは不可能です。不測の事態を想定した場合、大切な資産をどこに置くべきか、資産防衛のプロであるウエルスマネージャーが、現状から読み解いていきます。

具体的な「資産保全先」6つのエリアを考察

ここでは国や地域の具体的な名前を上げつつ、そのメリットとデメリットを記述していこうと思います。現状は主に以下の国々があげられるかと思います。

 

①香港

②シンガポール

③モンゴル、カンボジア、マレーシア、スロバキア等のアジア・東欧等新興国

④スイス

⑤バージン諸島、ケイマン、バミューダ等のオフショア金融センター

⑥アメリカ合衆国

 

それぞれに地域においてメリットやデメリットがあるといえるでしょう。

 

①香港

現状、香港は中国の主権下にあるため、CRSという世界の金融機関の情報交換の取り決めには加盟してはいますが、実際は、積極的には顧客情報を国外に提供している気配はありません。

 

中国に返還される以前は、日本から当局の駐在員が配置されて情報を収集していたという過去もあり、ある意味では日本の影響力が大きかった地域でした。しかし中国の一部となったいま、日本からの影響力はまったくなくなった、といっても過言ではありません。

 

その意味では日本に潜在するリスクのいくつかからは、ある程度隔離できる可能性はあります。

 

ただ別の問題として、将来的にいまより中国の影響が強くなってきたとき、どれだけ資産が法治国家のように保全されるか、ということがあるといえます。

 

②シンガポール

シンガポールは、日本の富裕層に人気のある国です。また、スイスを模倣した金融システムも、非常に信頼性が高い地域です。日本とは距離も文化的にも近いので、安心感があります。ただ最も懸念しなければならない点の一つは、比較的日本の影響力が強い、という点になります。

 

@pixabay
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③モンゴル、カンボジア、マレーシア、スロバキア等のアジア・東欧等新興国

また最近よく耳にするのが、アジアや東欧など新興国にある金融機関です。

 

これらの国々は情報システムの整備が進んでおらずインフラ面で懸念があります。また海外に資産を配置する際に最も忘れがちなのは、なにか問題が起こったときの対処方法です。

 

これらの国でなんらかのトラブルが起これば手も足も出ないであろうことは容易に想像できます。そんなことからまとまった規模の資金を預けるのには大きな不安があります。

 

④スイス

スイスは世界中の資金や資産があつまる世界中の金庫の様な地域です。金融システムも堅牢で信頼性も高いといえます。一方、懸念点があるとすれば、欧州の真ん中に位置していて、日本から決して近くないことがあげられるでしょう。

 

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またその排他的で頑固な国民性も上げられます。なにかトラブルなどが起きた際に日本語などを理解し、日本の顧客の立場に立って弁護などをするような専門家の数が著しく少ないという点です。

 

つまりなにかトラブルが生じた際にはこちらも手も足も出ない、という状況に陥る可能性があります。またスイスのプライベートバンクは一般的にスイスの物価が高いことも有り、高コスト体質でも有名です。

 

⑤バージン諸島、ケイマン、バミューダ等のオフショア金融センター

バージン諸島、ケイマン、バミューダ等はオフショア金融センターとしては有名な地域ですが、産業の実態はほとんどなく、あくまでもブッキング(帳簿上)のための場所です。実際、ここに行っても住民は少なく、一般の個人の資産家や富裕層が資金や資産をわざわざ配置する意味はあまりないのではないかと思います。

 

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⑥アメリカ合衆国

アメリカは一般的にはなじみのある国ですがプライベートバンキングという観点としてはそうでもないかもしれません。しかしアメリカの金融システムは非常洗練されており、投資家保護の観点からの法律や規制は世界で最も進んでいるといえます。

 

数多くの著名な金融機関も有しているためこれらの金融機関に預けていれば金融機関の倒産リスクなども心配ありません。

 

しかし最も安心できる点はこの国は世界で最も日本人が居住している国であるという点です(2021年現在で約43万人。これに加えて日系米国人の数は79万人。これは現地でなにかトラブルが起こった際には非常に心強い味方になる、ということです)。もちろん、どんなに数がいてもその質は玉石混交で、すべての人を信頼できるわけではありません。しかしそれでも安心感が異なります。

 

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このように分散先については、それぞれの国や地域の長所や短所などの特徴や、自身の家族状況や環境なども加味して、最終的に決定するとよいでしょう。

 

 

遠坂 淳一

株式会社 ジェイ・ケイ・ウィルトン・インベストメンツ 代表取締役

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