
中国が尖閣諸島の領有権を主張している理由は明白です。世界最大級の油田が存在する可能性が指摘されてから、中国は一転「魚釣島(尖閣諸島)は自国の領土である」と主張し始めました。そのとき政治家、田中角栄はどう動いたのでしょうか。日本経済新聞記者の前野雅弥氏が著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)で解説します。
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莫大な資産が尖閣の海に眠っている
■中国が尖閣諸島を狙っている理由
中国を突き動かしているのは、実は単なる思惑ではない。確信でありデータだ。その根拠となっているのが、1968年秋に国連アジア極東経済委員会(UN:EconomicCommission for Asia and the Far East =「ECAFE」)が実施した調査だ。
この調査の発端となったのが、1961年に東京水産大学教授の新野弘がアメリカのウッズホール海洋研究所のケネス・O・エメリーと共同で発表した論文『東シナ海と南シナ海の浅部の堆積物(Sediments of Shallow Portions of East China Sea and South ChinaSea)』 だ。
ここで新野とエメリーは、東シナ海の浅部から入手した底質試料を南カリフォルニア大学で分析させたというのだが、その結果、底質試料に石油に転換するために必要な適度な有機物が含まれていることが確認された。
この底質試料は、黄河や長江などの川によって堆積物として大陸棚に運ばれ蓄積したものである。炭酸カルシウムが多く含まれ、当時、石油を産出していたカリフォルニア州の大陸棚の堆積物と類似しているという。
ちなみに、ここで新野の論文が指摘した炭酸カルシウム(CaCO3)を50%以上含有する岩石は「石灰岩」と総称される。石油地質的には主要な貯留岩となっているケースが多く、中東などの大油田は石灰岩を貯留岩としているものが多い。つまり、この論文は東シナ海と南シナ海の大陸棚に石油が埋蔵されている可能性を指摘しているわけだ。
さらに1968年6月、この論文の正当性を裏づける調査が実施された。アメリカ海軍海洋局による空中磁力調査だ。この調査の結果、日本と台湾の間の大陸棚の外縁などに石油を埋蔵する可能性を秘めた堆積層(新第三紀堆積層)が存在し、東シナ海やその周辺の浅海域に石油や天然ガスが存在する可能性が明らかになったのだ。
1968年10月と11月には、アメリカ海軍指揮下の調査船HUNT号を使用した調査も実施され、台湾の北東20万平方キロメートルに及ぶ地域、つまり現在の尖閣諸島周辺で石油、天然ガスが存在する可能性が高いという事実も明らかになった。
台湾と日本の間にある大陸棚は、世界で最も豊富な油田のひとつとなる可能性が大きいとの指摘も浮上し、その後の日本の調査で、尖閣諸島海域の石油の推定埋蔵量は1000億バレルを超えることが判明した。
1000億バレル(約150億トン)は、世界第6位の産油国であるイラクの全油田埋蔵量の合計とほぼ同等である。資産価値は単純計算で700兆円に相当する。莫大な資産が尖閣の海に眠っているのだ。
中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、このときからだ。国連のECAFEの調査で世界最大級の油田が存在する可能性が指摘されてから、中国は一転「魚釣島(尖閣諸島)は自国の領土である」と主張し始めたのだ。1960年代半ばまで中国は何ら日本に対して主張することはなかった。1970年代に入ってから突如として領有権を主張し始め、段階的にエスカレートしている。
1980年代に入ると、中国の実力行使も顕著になる。日中中間線に沿った中国側海域の二十数カ所で試掘を開始、1990年代になると日本側の海域に入った地点で試掘を強行し始めた。そして、そこで石油の自噴を確認し、東シナ海にいかに巨大な油田が眠っているのか、その証拠をつかんでいったのだ。
もちろん日本側も警告したが、中国側はこれを無視した。中国は必死だし、東シナ海、とりわけ尖閣諸島海域での石油の存在を見込んでいる。