なぜ「日本人だから嫌いだ」と言われる留学体験は貴重なのか?

【特別対談】石田淳・行動科学マネジメント研究所所長(前編)

なぜ「日本人だから嫌いだ」と言われる留学体験は貴重なのか?
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の教育はどのように変わっていくのか、自分で考える力をつけさせるのに、親は子どもに何をしてあげるころができるでしょうか。歯科医師の成田信一氏が行動科学マネジメント研究所所長の石田淳氏と特別対談で語ります。

小さいころから本を読む習慣を身につけさせる

石田 身だしなみというのは見た目だけでなく、マナーや教養も含まれますね。私自身、海外に行くと日本人というだけで禅や宗教、文化など、日本という国は何を大事にしているかについて質問されます。

 

成田 確かに大事ですね。長男の同級生で、小学校の途中からスイスのボーディングスクールに転入し、イギリスの大学に進学した子がいます。その子が一時帰国した時に、ホームパーティに招待されて3年ぶりに会ったのですが、料理の手伝いや配膳など、率先してやれる子になっていて感心しました。

 

18歳くらいですから難しい年頃なのに、堂々と大人との会話もできて、自分のことは自分でやるのはもちろん、おもてなしの精神も身についている。海外で学ぶことは、英語を身につけるだけじゃないと実感しました。

 

石田 留学もいいですね。とりあえず2週間だけとか1カ月だけでもいいので、小さいうちから海外を体験する機会を設けてあげられるなら、留学したほうがいいと思います。

 

成田 私の次男は中3の夏から高1の夏まで、1年間ニュージーランドに留学して寮生活をしていました。ニュージーランドは、先住民族のマオリが2~3割、ほかにヨーロッパ系やアジア系の人も多く、人種のるつぼです。だから街を歩いていてもいろいろな人がいます。そういう国に行くと当然、常識も考え方も違う人に出会います。

 

中でも次男が一番驚いていたのは、一人の白人の子に「日本人だからおまえは嫌いだ」って言われたことだそうです。「有色人種は嫌だ、一緒に食事をしたくない」と面と向かって言われたわけです。日本にいたらそのようなこと言われませんよね。とはいえ、世界中で一定の割合の人はそう思っているんです。

 

しかも自分と同じ高校生でもそう考える人がいる。それを早めに理解したのはいいことだと思いました。語学の習得ももちろんですが、異文化に積極的に触れ、世界ではいろいろな考え方、見方をする人がいることを、身をもって体感したわけです。

 

石田 差別を受けるのはあんまり気持ちのよいことではありませんが、そういうことも実際あるということを、特に高校生くらいで知ったのは大きいと思います。大人になってからよりもずっと大きな衝撃を受けたでしょうし、そういった考えの人とも一緒に寮生活を送らなければならないことで、よりコミュニケーション能力も磨かれたでしょう。

 

日本にいる時のような阿吽の呼吸でのコミュニケーションはまったく通じないですから、積極的に自分の気持ちを伝えたり、相手の声に耳を傾ける必要性も感じたのではないでしょうか。

 

成田 教養や自分で考える力をつけさせるのに、家庭で親がしてやれることもありますか。

 

石田 近道は、小さなうちから本を読む習慣を身につけさせることと、いろいろな体験をさせることだと思います。さまざまなジャンルの本を読めば知識が増えますから、考える材料が増えます。子どもに本を読む習慣をつけさせるには、親も日常的にいろいろな本を読んでいる姿を見せて、読書が生活の一部というようにするのがよいでしょう。たとえば、本棚に少年少女文学全集のようなものを並べて、いつでも手に取ることができる環境をつくってやる。

 

旅行に行く時には、日本文化や歴史に触れられるような場所に連れて行ったり、オペラや歌舞伎を鑑賞したりするのもいいでしょう。そういった経験が後々大きな差になります。レストランに行った時に、フォークとナイフの使い方やテーブルマナーを教えることも体験です。いろんなものに触れる機会を設ければ、その中で子ども自身の好きなものが見つかるかもしれません。そういうチャンスを与えてあげることが、親の役割だと思います。

 

石田 淳
社団法人行動科学マネジメント研究所所長
日本の行動科学(分析)マネジメントの第一人者
アメリカのビジネス界で絶大な成果を上げる人間の行動を科学的に分析する行動分析学、行動心理学を学び、帰国後、日本人に適したものに独自の手法でアレンジし「行動科学マネジメント」として展開させる。主な著書は、シリーズ累計部数40 万部のベストセラーとなった『教える技術』(かんき出版)ほか多数。

 

成田 信一
自由が丘矯正歯科クリニック院長
歯学博士

 

 

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