常人には考えられないほどの資産を保有する「超富裕層」。米国には、そんな桁外れの富裕層が大勢います。彼らにとって資産防衛は身近なテーマであり、その手法からは学ぶべきことがあるでしょう。米国で超富裕層を相手に活躍する税理弁護士から、資産防衛のヒントを学んでいきます。

なぜ米国・超富裕層は多額の寄付を行うのか?

米国の超富裕層が寄付を行うにはいくつか背景があり、その大きな部分が税務です。今回謎に包まれたこの多額の寄付でどのようなことが行われているかを、実務の面から紐解いていきましょう。

 

ポイントその1:現金ではなく株券をそのまま寄付する

今回注目すべきは、イーロン・マスクが自身の株券をそのまま寄付したことです。

 

なぜこのようなカタチで寄付を行ったかというと、米国では株券を現金化する際、長期譲渡益課税で最高税率20%がかかるからです。イーロン・マスクの寄付額であれば、この最高税率が課せられることになるでしょう。11月時点の株価で売却したとなれば、特殊な対策をしていなかった場合、連邦税だけで$1.1Billion、そして州税でも$0.8Billion、合計で$2Billionほど課税される計算となります。

 

一方で株のまま寄付する場合はどうでしょう? 株を寄付したのちに寄付団体が売却する場合、譲渡益分は非課税となります。

 

つまり超富裕層は資産を売却するための『箱』として、私設財団を設立することがある、ということです。もちろん現金化した後は、それぞれが支援する団体に分配し、寄付をするのが一般的です。

 

ポイントその2:寄付する際にその年の収支を圧縮することが可能

米国では私設財団だけでなく、信託やファンドを用いて寄付をする手法があり、寄付した額の一定割合が収支に対して控除が適用されます。今回のイーロン・マスクの件では、寄付先は自身の私設財団ではないと言われるものの、寄付をした際の控除が絡んでいると言われています。

 

特に2021年には初期に付与されたオプションの行使をしなくてはならず、その行使によって約$12Billionの課税がされると発表されたばかりでした。つまり、2021年度に寄付をして控除を受ける理由は十分にあるということです。

 

では、米国の寄付の仕方に関していくつかの手法を紹介いたしましょう。

 

A. 私設財団(Private Foundations)501(c)(3)

マスク財団がこれに相当し、すべての資金がどの用途に使われるか、コントロールすることができます。また公共財団501(c)(3)に寄付をせずに、個人の学費や旅費の支援、家族を雇用することで給与を支払うこともできます。

 

*公共財団(Public Charity) 501(c)(3):公共財団の設立詳細については割愛させていただきますが、目的、継続的な総額の1/3公共からの資金調達、取締役会の基準などで高い要求が課されます。

 

さらに私設財団のなかで一定のルールを守れば大きく課税をされることなく、資産運用によって資金を増やすことが可能です。

 

以下が私設財団の特徴です。

 

● 株や資産を寄付する場合は、なかで売却された譲渡益は非課税となる

● 献金する先を自由に示唆でき、個人や政府機関に寄付をすることも可能

● 毎年最低5%の資産を経費として計上する必要がある

● 現金で寄付した場合は調整後総所得(Adjusted Gross Income)の30%まで控除可能

● 株や不動産などで寄付した場合は調整後総所得(Adjusted Gross Income)の20%まで控除可能

● IRSのルールに基づいて、債券、株式、ファンドなどで運用が可能

● 運用益には1~2%の税金がかかる

● 営利企業・非営利企業の両方に投資することが可能

● 名義や取締役会の名前は公開される

● 将来的にどの寄付をするか選ぶことができる

 

B. ドナー・アドバイズド・ファンド(Donor Advised Fund)

ドナー・アドバイズド・ファンドは、公共財団501(c)(3)への寄付を選定するまでの臨時口座のような立ち位置で、最終的に公共財団に寄付をすることを目的としています。ドナー・アドバイズド・ファンドでも投資運用は可能で、さらに控除対象額は私設財団への寄付より大きい割合が付与されます。

 

● 株や資産を寄付する場合は、なかで売却された譲渡益は非課税となる

● 献金する先は公共財団501(c)(3)へ基本的には限定(例外はあり)

● 経費額は定められていない

● 現金で寄付した場合は調整後総所得(Adjusted Gross Income)の60%まで控除可能

● 株や不動産などで寄付した場合は調整後総所得(Adjusted Gross Income)の30%まで控除可能

● IRSのルールに基づいて、債券、株式、ファンドなどで運用が可能

● 運用益は無税

● 営利企業・非営利企業の両方に投資することが可能

● 完全に匿名のオプションあり

● 将来的にどの寄付をするか選ぶことができる

 

C. 残金寄付信託 (Charitable Remainder Trust)

残金寄付信託は変更不可信託(Irrevocable Trust)の一種です。ほかの手法と大きく違うのは、一定の資産金額(5%~50%)が年金として寄付した人に所得として支払われ、受益人が亡くなった後に残りの金額を公共財団に寄付される信託であるという点です。

 

信託を設定する時点で基本的には寄付する先の団体を選定する必要がありますが、ドナー・アドバイズド・ファンドと掛け合わせることによって選定を遅らせ、両方の利点を活用することも可能です。

 

● 株や資産を寄付する場合は、なかで売却された譲渡益は非課税となる

● 献金する先は公共財団501(c)(3)へ基本的には限定(例外はあり)

● 経費額は定められていないが、所得として指定の人に信託から5~50%の資産を支払う必要があり

● 現金で寄付した場合は最大調整後総所得(Adjusted Gross Income)の60%まで控除可能(IRSの計算式に基づく)

● 株や不動産などで寄付した場合は調整後総所得(Adjusted Gross Income)の30%まで控除可能(IRSの計算式に基づく)

● IRSのルールに基づいて、債券、株式、ファンドなどで運用が可能

● 運用益は無税

● 営利企業・非営利企業の両方に投資することが可能

● 完全に匿名のオプションあり

● 基本的には信託を設立する時点で選択する必要あり

 

他にもさまざまな寄付方式がありますが、上記の三種が多く使われている手法です。

 

今年、株のオプション行使の際に基準とされるイーロン・マスクの収入は、$25Billionに及ぶと言われています。課税率がカリフォルニア州税と連邦税合わせて53%とした場合、寄付による控除によって、$25Billionの最大3割の調整後総所得(Adjusted Gross Income)が課税対象外となるため、イーロン・マスクはテスラ株の譲渡益部分の$2Billionに加え、その年度で最大約$4Billionの節税が可能となります。

 

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