(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年7月14日に公開したレポートを転載したものです。

金融市場は「FRB引き締め一巡」を予見している

インフレ期待および長短金利はピークアウトした模様

6月のFOMCでは2022年末の政策金利3.4%、2023年末3.8%との想定が示された。これまでの累計利上げ幅は1.5%、FOMCは、年内にさらに1.65%~1.9%、2023年にはさらに0.4%の利上げを示唆していることになる。

 

しかし市場はそれを信じていない。米国の国債利回りは2、5、10年のすべてですでにピークアウトしている。インフレが顕著に鎮静化すると予見し、FRBの利上げ中断を見越しているのである。

 

国債利回りと物価連動国債(TIPS)との差で計算される期待インフレ率は、3月末の2年4.9%、10年3.0%がピークで直近7月12日は2年3.2%、10年2.3%と大きく低下している。

 

[図表3]米国2・5・10・30年期待インフレ率推移/[図表4]米国物価連動国債利回り(=実質金利)等推移
[図表3]米国2・5・10・30年期待インフレ率推移/[図表4]米国物価連動国債利回り(=実質金利)等推移

 

米国長期金利のピークアウトはまたとない好材料

米国長期金利が3月末の3.5%でピークを打ち2%台まで低下してきたことをもって、景気失速を予見しているとの見方があるが、それはたぶん違う。むしろ10年国債利回りがFOMCが予想する最終政策金利3.8%以下でピークを打ったとすれば、それはポジティブなことである。

 

長いあいだ弱気派は米国の長期金利低下が景気失速の前兆であると主張し続けたが、それは過去40年間、間違い続けた解釈であった。図表5にみるように米国長期金利(10年国債利回り)は2000年ごろ以降、名目経済成長率を大きく下回るようになった。

 

これこそが、持続的経済成長と長期株高の根本原因であり、それが2022年のインフレ急騰と年前半の株価暴落のもとでも継続している。景気と株価に強気になれる最も重要な条件といえる。

 

[図表5]米国名目GDP成長率と長短金利の推移
[図表5]米国名目GDP成長率と長短金利の推移

 

次ページなぜFRBは本質的に「ハト派」なのか

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