二次相続と「争続」回避を見据えた相続税対策の事例

前回に引き続き、二次相続と、いわゆる「争続」の回避まで見据えた相続税対策の事例を見ていきましょう。

不動産の「共有」だけは絶対に避ける

前回に引き続き、一次、二次の相続を見据えた相続税対策の事例を見ていきましょう。

 

ケース②

 

Bさんはすでに夫を亡くし、一次相続で財産を相続しました。Bさんには2人の子がおり、長女はBさんと同居していますが、長男は会社員で地方へ単身赴任しています。財産は、自宅と1件の賃貸マンションです。

 

このような場合、Bさんは同居している長女に自宅敷地を相続させれば、小規模宅地等の特例が使えるので税金は安くなります。

 

しかし、親というのは「子には平等に相続させたい」と思うもの。相続税額だけを考えれば長女に相続させたほうが有利でも、Bさんにとってそれは机上の空論です。

 

とはいえ、財産が平等に分けられるような構成なら問題ありませんが、自宅と1件の賃貸マンションといった財産構成の場合、少し厄介です。平等にこだわると、不動産を共有にするという答えになりやすいからです。

 

しかし共有は、〝争続〞を避けるため、極力避けたい方法です。今は仲がよくても、先を見据えた場合、仲が悪くなることも十分あり得るからです。

 

そこで私は、Bさんにもう1件賃貸不動産を購入し、それぞれで1件ずつ所有させることを提案しました。Bさんはその方法を選択され、ご希望通り平等に財産を渡すことに成功しました。

相続税の減額だけを目指すと、兄弟仲がこじれることも

ケース③

 

資産家Cさんは、相続税対策として法人化を実行し、賃貸用建物をその法人に譲渡しました。そして、その賃貸用建物からの家賃収入を3人の子に分配しています。しかし、相続が発生する前に賃貸不動産をもう2件購入し、子1人につき1件という形で相続する計画を立てています。

 

なぜこのような形にするかというと、一番下の弟が「真ん中の兄さんといつまでも一緒に法人をやりたくない」と言い出したためです。

 

このようなケースはよく見られます。最初はよくても、数年後に誰かの経済状況が悪化したり、あるいは何かのきっかけで亀裂が入ったりして、兄弟の仲がうまくいかなくなることがあるのです。

 

Cさんの子たちは、表面上は問題ありませんでした。しかし先のことを考えると、このまま放置して相続時の争いに発展するのを心配するよりは、1人1社という形がもっともよいのではないかと提案し、Cさんおよび子3人の賛同を得たので、その計画を進めているわけです。

 

このように、自分たちの状況に沿って先を見据えてみると、相続税を減額することだけがゴールではないことがわかります。

 

とはいえ、人間が一度にできること、考えられることは限られています。1つの相続税対策を行うには、相応の準備や期間が必要であり、それだけでほとんどの方は頭がいっぱいになってしまいます。

 

筆者の場合は、まず差し迫っている直近の相続に対してもっともよい対策をご提案し、遂行していきます。そして被相続人の心に余裕ができたころに、かねて考えていた「その先のアイデア」をご提案しています。

 

税額だけを考えた対策では、決してたどり着けない解。それを見つけ出し、その方法を十分な説明とともに提案していくことが、被相続人だけでなく、相続人の「納得」と「安心」を兼ね備えた真の相続税対策となるのです。

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北村税理士事務所 代表
税理士(東京税理士会麻布支部所属)
TKC全国会資産税対策研究会 会員 

1971年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学卒業後は東京都港区の藤浪会計事務所に所属、資産税を中心としたコンサルティング業務に従事。六本木ヒルズや白金プラチナタワーなどの再開発案件にも携わる。2005年より早稲田大学大学院会計研究科にて租税法の大家である品川芳宣教授に師事。2007年、北村税理士事務所を開設。現在は相続税対策・申告や、顧問税理士業務を中心に行う。

著者紹介

連載大増税時代に大損しない「不動産の売却」まで見据えた相続税対策

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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