(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症は、世間一般が考える以上に長い年月をかけて進行する病気です。家族が「何回も同じことを聞く」などの疑わしい症状に気づいた頃には、すでに重症化してしまっていた、ということも珍しくありません。早期発見・早期治療のために、認知症がもたらす症状や兆候を押さえておきましょう。医療法人いくしま医院院長・幾嶋泰郎医師が解説します。

認知症は「原因疾患」ごとに種類が分かれる

認知症とは、脳の細胞がダメージを受け、記憶力や判断力などの脳の働きが低下し、日常生活を送る上で支障が出てくる状態です。一度発症すると、元の状態に戻すことは難しく、今日保険で認められている薬剤は、できるだけ進行を遅らせることを目標にしています。

 

認知症の原因は脳の病気や障害など様々ですが、中でも一番多いのが、脳にアミロイドベータという特殊なたんぱく質がたまり、それによって神経細胞が傷つけられ、最終的には脳が萎縮してしまう「アルツハイマー型認知症」です。

 

その次に多いのは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症する「血管性認知症」です。脳の損傷した部分によって症状の出方は異なります。その他にも、幻視やパーキンソン症状などが現れる「レビー小体型認知症」や、50歳台くらいの比較的若い方が発症しやすい「前頭側頭型認知症」など、認知症と言ってもいくつかの種類があり、現れる症状にもそれぞれの特徴があります。

認知症の“前段階”、「MCI」を知っていますか?

「軽度認知障害(MCI)」(日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン2017)と呼ばれる病態は、認知症の前段階として認識されています。MCIは、基本的な生活に影響を及ぼすほどの症状ではありません。

 

<MCIが疑われる症状>

①以前と違って認知機能の低下がある。本人、家族などの情報提供者、医師などによって指摘される。

②記憶、遂行、注意、言語、空間認知のうち、1つ以上の認知機能障害がある。

③基本的な日常生活機能は正常である。昔よりも時間を要したり、非効率であったり、間違いが多くなったりする。

④認知症ではない。食事や入浴、トイレなどは問題なく自分自身で済ませられる状態。

 

それ以外でよく聞くのは、

 

⑤頻繁に置き忘れたり、よく探しものをしていたりする。

⑥今まで慣れていた家事や作業に時間がかかるようになった。

⑦趣味や人付き合い、外出することが億劫になった。

⑧買い物で小銭を出さずに大きなお金を頻繁に使い、お釣りでもらった小銭が財布にあふれんばかりになっている。

⑨病院でもらった薬がたくさん余っている、または捨ててあることがある。逆に足りないことがある。

⑩性格の変化、特に怒りっぽくなった。

 

などがあります。以下に記憶障害、実行機能障害、時間と場所の見当識障害、理解力・判断力の低下、無気力・無関心(アパシー)、物盗られ妄想、失認・失行・失語に分けてそれぞれの注意点を見ていきましょう。

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