(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症は、世間一般が考える以上に長い年月をかけて進行する病気です。家族が「何回も同じことを聞く」などの疑わしい症状に気づいた頃には、すでに重症化してしまっていた、ということも珍しくありません。早期発見・早期治療のために、認知症がもたらす症状や兆候を押さえておきましょう。医療法人いくしま医院院長・幾嶋泰郎医師が解説します。

スポーツ番組ばかり観るようになった…は“黄信号”かも

【記憶障害】

若い頃の思い出などの「長期記憶」は鮮明に覚えているにも関わらず、数秒〜数分前の「短期記憶」が難しくなり、ほんの少し前に起きた出来事もすぐに忘れてしまいます。認知症の記憶障害はところどころ忘れていることが特徴です。

 

少し前に質問したこと自体を忘れて、何度も同じことを聞き返すことがあります。さっき食べたみそ汁の具を思い出せなかったり、食べたことを忘れて“朝ごはんはまだ?”と聞いたりすることがあります。残り物を温めようとして、鍋をコンロにかけたことを忘れ、鍋を焦がすことがあります。

 

お気に入りのテレビドラマのストーリーを追うことが難しくなり、前回のストーリーを思い出せないので、だんだん面白くなくなってドラマは観なくなります。その代わり、投げた、打った、蹴った、点が入ったなど、スポーツはルールがわからなくても観戦はできるので、野球、サッカー、ラグビー、相撲などを好んで観るようになります。

 

置き忘れ、片付けたことを忘れるなど常に探し物をしている状態です。通帳や印鑑をどこにしまったかを忘れて、誰かが盗ったと思い込み、家族とトラブルになることはよくあります。失禁した下着を見られたくなくて箪笥の奥にしまったまま忘れ、箪笥から変なにおいがして開けたら、カビの生えた下着が出てきたということもあります。

 

【実行機能障害】

料理の手順がわからなくなって料理を作れなくなったり、今まで使っていた家電をどのように使うのか手順がわからなくなったり、計画を立てて順序よく行動することが難しくなります。エアコンのリモコンのボタン操作がわからず、エアコンは設置されているのに熱中症になる方もいます。

 

【時間と場所の見当識障害】

朝・昼・夜の区別がつかなくなったり、季節がわからなくなったり、日付や時間がわからなくなったりします。

 

薬の袋には“〇月×日 朝食後”と書いてあっても〇月×日が今なのか明日なのか分からないので、薬を飲んでいなかったり、逆に過剰に飲んでしまったりして危険なことがあります。薬が余っていたり、不足したりするような場合は要注意です。外来で1週間分の薬を処方しても、10日後にやってきて、“今日まで薬はありました。”など言われたときは認知症が始まっていると解釈します。

 

朝3:00を夕方3:00と勘違いして真夜中に出かけようとすることがあります。

 

真夏に冬物の衣服を選ぶことがあります。エアコンが効きすぎていたり、お気に入りの服が見当たらないようなときに起こるようです。自宅のトイレの場所がわからなくなって、失禁してしまうことがあります。

 

【理解力・判断力の低下】

言われたことをすぐに理解して判断することが難しい、信号を渡るタイミングがわからないなど理解力・判断力が低下します。電車やバスの降りるタイミングがわからず目的の場所に着けなかったり、通いなれた近所の道で迷子になったりすることがあります。

 

“子供にお菓子はやらないでね”と言っても“子供にお菓子をあげると喜ぶ”ので、禁止された行為でも自分の感情に従ってお菓子をあげてしまいます。前頭葉は理性をつかさどるところなので、理性が低下するとどんどん感情的になっていきます。

 

【無気力・無関心(アパシー)】

疲れやすく、やる気がなくなります。脳が疲労しているのが原因です。身の回りのこと、好きだった趣味への関心が薄れ、入浴、洗顔、着替えなどの身支度をする気力さえもなくなることがあります。食欲がなくなり、好きだったものも食べなくなります。

 

【物盗られ妄想】

自分で片付けたものや失くしたものを「盗まれた」と言い出すなど被害妄想になります。家族を疑うこともあれば、ホームヘルパーなどを疑うこともあります。財布の中に千円札が5枚入っていたことを覚えていても、そのうちの“1000円を孫に小遣いとしてやった”ことを思い出せず、“5000円あったのに今は4000円しかない”、“これはきっと誰かに盗られたに違いない”と思うのです。そして、皮肉なことに、同居しているお嫁さんや毎日来ているヘルパーなど、一番身近に世話をしてくれる人が疑われます。その人のことしか思い浮かばないからです。

 

【失認・失行・失語】

目や耳に障害がなくても、見えているものや聞こえている音が何なのか認識できなくなり、車が近づいているのに避けようとしないで、交通事故にあうことがあります。日常的に行なっている動作ができなくなり、箸を使わず手で食べようとすることがあります。言われたことを理解できない、理解してもすぐに言葉が出ないことがあります。時計の文字盤が読めないので、約束をすっぽかすことがあります。はさみなどの使い方がわからなくなってしまうことがあります。

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