生活習慣病リスクを下げる「地中海食」…脂肪肝の予防・改善に効果的な“食べ方”【医師が解説】

生活習慣病リスクを下げる「地中海食」…脂肪肝の予防・改善に効果的な“食べ方”【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

肝臓病は、原因はなんであれ肝炎→肝硬変→肝がんへと進行していくことがあります。これは、日本人の3人に1人といわれる「脂肪肝」も例外ではありません。脂肪肝を脱出するには、まずは太らない体を作ることが重要です。無理のないペースで、しかし確実に脂肪を減らしていく方法として、ここでは「地中海食」について見てきましょう。みなと芝クリニック院長・川本徹医師が解説します。

生活習慣病リスクを減らす…今注目の「地中海食」

世の中には、健康情報がたくさん溢れています。しかし、きちんとした効果を得るには、エビデンス(科学的根拠)に基づいた健康法を選ぶことが大切です。

 

さまざまな国で研究がなされ、いくつも論文が出されている食事法として「地中海食」があります。これは料理名ではなく、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸地域の伝統的な食生活のことをいいます。

 

地中海沿岸の国では、高脂肪食を食べているにもかかわらず、血中コレステロールが低く、心筋梗塞などの冠動脈疾患が少ないことが明らかになり、地中海食が注目されるようになりました。地中海食は、心・血管疾患、糖尿病、がんなどの生活習慣病のリスクを低下させる食事法であることが分かっていますが、それに加えて、脂肪肝を軽減するということが知られています。また欧州のガイドラインでは、NAFLD*患者の食事療法として地中海食が勧められています(NAFLD…日常的にアルコール摂取がない、あるいは少ない人にみられる脂肪肝。図表1参照)。

 

NAFL:単純な脂肪肝。肝細胞に脂肪が沈着しているだけで、炎症や線維化はない NASH:進行性。肝細胞の傷害や炎症を伴っており、肝硬変や肝がんを発症するリスクがある
[図表1]参考:脂肪肝の分類 NAFL:単純な脂肪肝。肝細胞に脂肪が沈着しているだけで、炎症や線維化はない
NASH:進行性。肝細胞の傷害や炎症を伴っており、肝硬変や肝がんを発症するリスクがある

地中海食の特徴

地中海食の特徴は、全粒の穀物、色鮮やかな緑黄色野菜、果物、豆類・ナッツ、きのこ類をたっぷり使い、脂質の少ない鶏肉や魚介類が多く、油はオリーブオイルがベースといった点が挙げられます。また、たんぱく質として最も摂取が推奨されているものは、チーズやヨーグルトといった発酵食品であり、次に魚、鶏肉、卵、赤身肉という順番で推奨摂取量が少なくなっていきます。菓子類の摂取よりも赤身肉のほうが控えめという点も大事です。

 

油脂では不飽和脂肪酸が多く、飽和脂肪酸を多く含む肉類は少なめ、また野菜や果物など植物性の食品を多く摂取することで抗酸化作用が期待できるなどが、健康に良い理由であると考えられます。

 

注意点として、地中海食では適量のワインを摂取しますが、NAFLD患者にも勧めるべきかどうかは、現時点では不明です。アルコールはどの種類であっても、常用すれば肝臓に負担がかかります。脂肪肝で治療中の方やNASH肝硬変では、アルコールは避ける必要があります。

 

 

[図表2]地中海食のピラミッド

 

地中海沿岸諸国は、長寿者が多いことでも知られています。地中海食は、発酵食品や魚を多く取るなど和食とも共通点が多々ありますから、私たち日本人には、非常に取り入れやすい食事法だと思います。

次ページ進化した「グリーン地中海食」ならさらに効果的

※本連載は、川本徹氏の著書『死肪肝』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

死肪肝

死肪肝

川本 徹

幻冬舎メディアコンサルティング

沈黙の臓器、肝臓。 「気付いたときにはすでに手遅れ」を防ぐために――。 臨床と消化器がんを研究し、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでがん治療の最先端研究に携わった著者が、脂肪肝の基礎知識とともに肝…

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