「自社株のすべてを後継者へ」…遺言作成後の経営者に、必ずやっておいてほしいこと【中小企業の事業承継】 (※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業の事業承継において重要な「後継者への自社株移転」。社長から後継者への移転を相続で実現する際、準備が甘いと、納税資金の不足や後継者以外の相続人の遺留分侵害といった、対処の難しいトラブルが起きるリスクがあります。リスクを回避、あるいは軽減する具体的な方法と、相続にあたって留意すべきポイントを解説します。

「相続時、自社株を後継者に渡す」リスクは相当なもの

社長が亡くなるまでの間、社長が自社株を所有していることにリスクがあります。それは、社長の認知症のリスクです。人生100年時代といわれる今、認知症のリスクは強く意識する必要があるでしょう。

 

株主は議決権を持っています。会社の取締役の選任や解任、定款の内容変更など重要事項は、株主が議決権を行使して決定します。その議決権を行使する人が認知症になってしまったら、その株主は議決権を行使することができません。

 

筆者が社長に認知症のリスクを説明しても、

 

「うちは株主総会なんてやっていないし、今まで問題になったこともないから大丈夫。後継者が社長になって会社を取り仕切っていけば、私(社長)が認知症になっても問題ないでしょう」

 

と言って笑い飛ばす社長は結構多いのです。

 

本当に問題ないのでしょうか? 場合によっては後継者以外の取締役を解任する、または再任しないという選択をしなければならないときもあるでしょう。しかし、株主の社長が認知症で議決権行使できないと、その取締役の取扱いはどうなるのでしょうか?

 

会社の代表権を持ち、大株主である社長がすべてのことを決定している中小企業だからこそ、社長が元気のあいだは何も問題が生じません。しかし、後継者に社長を引き継いでも、株主である先代の社長が判断能力を著しく欠くような状況になってしまったら、会社経営には大きな問題です。それは、後継者がまだ、会社のことを決定できる大株主になっていないからです。

 

相続で自社株を後継者に渡すリスクは、社長が株式を所有する限りにおいて、完全に払しょくすることはできません。社長が死ぬまで大株主であることには、社長の認知症リスクという大きな課題があります。社長の相続で後継者に自社株を渡すことは、この課題を解決しなければならず、それは社長の遺言だけでは対応できないのです。

 

これらの課題解決には信託の利用が有効ですが、それについては別の機会に解説します。

「公平な相続でない理由」を、家族にしっかり伝えて

社長の遺言の内容は、社長自身が相続人に知らせない限り、相続人たちは知る由もありません。遺言内容の開示に積極的でない社長も多いと思いますが、社長がこの世からいなくなったあとに初めて知った「胸の内」が、特定の相続人に多くの資産を相続させる内容では、やはり相続人同士のトラブルになりかねません。

 

後継者には会社を継いでほしい。家族みんな末永く仲良くしてほしい。残された社長の配偶者は子どもたちでしっかり見守ってほしい…。このような思いは、社長が生前のうちから周囲にしっかりと伝えていくことが必要です。

 

遺言は、社長が亡くなったときから効力を生じます。そして、遺言はいつでもその内容の全部又は一部を修正・あるいは撤回することができます。

 

社長の自社株を生前に譲渡または贈与しないと考える社長は、まずは遺言を作成しましょう。しかし、社長の資産内容は変動し、その変動にあわせて遺言内容を変えていくことも必要です。遺言を作成したとき、あるいは書き換えたとき、すぐさま家族に内容を知らせる必要はありませんが、すべてを公平に相続することができない、社長の資産の相続では、「社長の家族への思い」を開示することが必要です。社長は時期を見て、資産承継の思いを家族に伝えておくことも大切だと、筆者は考えています。

 

 

石脇 俊司
一般社団法人民事信託活用支援機構 理事
株式会社継志舎 代表取締役

 

 

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    一般社団法人民事信託活用支援機構 理事
    株式会社継志舎 代表取締役 

    外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、本機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。著書に『信託を活用した ケース別 相続・贈与・事業承継対策』(共著・日本法令)『「危ない」民事信託の見分け方』(共著・日本法令)がある。

    株式会社継志舎
    東京都中央区日本橋兜町11-10 兜町中央ビル402
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