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相続税は相続財産を取得した個人に対して課される税金であり、財産取得者が法人の場合には相続人が財産を取得した時と取り扱いが異なります。では財産取得者が宗教法人の場合、相続税の取扱いはどうなるのでしょうか。みていきましょう。

宗教法人に遺贈した際の相続税の計算と注意点

宗教法人に遺贈した場合、相続財産を取得した他の相続人が納める相続税の金額に影響が出ます。

 

相続税は個人が相続・遺贈した相続財産を合計する

相続税は納税義務者となる相続人が取得した相続財産の合計金額に対して課税します。 一方で宗教法人が相続財産を取得した場合には、相続税の計算から宗教法人が取得した相続財産を除くため、課税対象金額が減少し、納める相続税が少なくなります。 相続税は、総遺産価格が多いほど税率が上がるため、宗教法人に遺贈した財産が多ければその分総遺産価額が減少し、相続税の税率は低くなります。

 

【図表】宗教法人に遺贈した際の相続税の計算への影響

 

不動産を寄付した場合には被相続人に譲渡所得税が課される

個人から個人に財産を渡した場合、生前なら贈与税、相続時なら相続税の課税対象です。 一方個人から法人に贈与・相続などの形で財産を寄付した場合、寄付財産が金銭であれば、法人に対して贈与税・相続税は原則発生しません。 しかし寄付財産が、不動産など譲渡資産の場合には、寄付を行う側(被相続人)の譲渡所得を計算しなければなりません。

 

譲渡所得は、売却金額から購入金額を差し引いた利益に対して課される税金です。 寄付は売却ではありませんが、寄付した時点の時価で売却したとみなして譲渡所得の計算をします。 売却時点の金額が、購入価格よりも値下がりしていれば、譲渡所得税を支払う必要はありません。 しかし値上がり益が発生する場合、生前中の寄付なら翌年2月16日か3月15日の確定申告期間、遺贈の場合には亡くなった日の翌日から4か月以内に申告手続きが必要です。

宗教法人に対して寄付した場合の特例制度

宗教法人に対して寄付や遺贈を行った場合には、次の非課税制度があります。

 

遺贈により不動産を寄付した場合の非課税制度

被相続人が法人へ不動産を寄付した場合には、譲渡所得の対象ですので、所得税を納めることになります。 しかし以下の特例要件を満たした場合には、寄付した財産に対しての譲渡所得は発生しません。

 

<譲渡資産の贈与・遺贈を行った際の特例適用要件>

●寄付先が宗教法人など公益を目的とする事業を行う法人

●寄付した財産を公益目的の事業に直接使用する

●財産の寄附があった日から4か月以内または寄附した年分の確定申告期限のいずれか早い日までに申告

 

なお非課税特例の申告後、寄付を受けた法人が寄付財産を公益事業に使用しなかった場合には、非課税特例の適用は取り消されます。 取り消しを受けた際には、譲渡所得の修正申告と納税が必要となりますので、ご注意ください。

 

宗教法人が関係する非課税制度の適用要件と手続きは難しい

被相続人が譲渡資産を寄付した場合の特例(租税特別措置法第40条)は、特例制度の中でも専門性が高い特例です。非課税特例を適用する際の要件や必要書類は多く、寄付先の法人が作成する書類もあり、書類作成を依頼するための説明も必要となります。

 

利用する場合には、相続税専門の税理士事務所に相談することを推奨します。

 

 

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    本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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