(※写真はイメージです/PIXTA)

中堅M&A仲介会社やM&Aプラットフォームのサービスが登場したことで、中小企業もこれらのサービスを活用して事業の買い手を見つけられるようになってきました。M&A市場が活性化することで、解散や廃業を選ぶ企業が減る可能性があります。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

支援機関の力を借りながらM&Aを実行

次に、譲渡先企業を絞り込み、基本合意書を締結します。さらに、買い手は譲り受ける企業の価値調査であるDD(デューデリジェンス)を実施し、財務や法務、不動産、事業の資料などが、基本合意の内容と合っているか確認し、間違いがなければ最終契約の合意に進み、クロージングとなります。これが、マッチングまでの一連の流れです。

 

案件の規模や相手先企業の見つけやすさにもよりますが、M&A仲介会社の場合、大手によるフルサービス~中堅の一部サービスでも、相談からクロージングまでに1年かかることは珍しくありません。いずれにしても、慎重に進めるのが基本といえます。

 

なお、資金面の問題から金融機関や大手M&A仲介会社に依頼できない中小企業の場合は、下図に挙げた支援機関の力を借りながらM&Aを進めていくことができます。


 
例えば、マッチングだけを請け負うM&Aプラットフォームを利用する場合、相談は事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関、企業価値評価は税理士や金融機関など、事情を知る関係者のサポートを受けることで、結果としてフルサービスに近いM&Aが実現するのです。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

■M&Aに対する国からの補助金制度

 

M&Aによる事業承継では、仲介手数料やアドバイザリー費用など、さまざまなコストを売り手企業が負担します。

 

なかには、着手金だけで数百万~1000万円を超えることもあり、一般的には買い手が負担するDD費(デューデリジェンス)用も、株式交換などでお互いの株式価値を算定しないといけない場合は、売り手もDD(デューデリジェンス)を実施して買い手側を調査するなど、一部のケースでは双方にコストが発生します。中小企業にとってはネックに違いありません。

 

こうした場合に検討したいのが、国による補助金の活用です。その一つが、事業再編や事業承継に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業・小規模事業者等を支援する「事業承継・引継ぎ補助金」(令和3年度)です。同制度の「専門家活用」の「売り手支援型(Ⅱ型)」ではM&A時に専門家を活用した際などに最大250万円の補助を行っています。

 

「地域の雇用をはじめ、地域経済全体をけん引する事業などを行っていて、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されると見込まれる」など、一定の要件を満たすことができれば利用できるので、うまく活用したいところです。

 

一方、「中小企業による経営資源集約化の促進に係る税制」では、M&Aを実施する中小企業に対して減税するなど、買い手企業を支援する制度も令和3年度に創設されました。国としても売り手・買い手を優遇してM&Aによる事業承継を加速させたい狙いがあります。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長

 

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    ※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

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