病院経営は、営利を目的とした企業の経営とは多くの点で異なり、「全体最適」の視点が必要になる。医療管理職を目指すひとのために、経営学の基本的な知識を理解しやすく解説します。

皆様の病院はいかがでしょうか?

 

「入院患者数が前年度比95%なので努力ください」「救急患者はどんな疾患であっても全例受け入れます」そんな会議がほとんどで、ステークホルダーをどうやって幸せにするかといった議論は稀かと思います。

 

米国では経営者であるドナルド・トランプ氏が大統領になり、選挙戦からの暴言や保護主義政策ばかりが注目されていますが、彼の勝因は、政治を行う者の目線でなく、「自身の力で米国民を幸せにしてみせる」と言ったことにあります。トランプ大統領は利己的に見えますが、実はとても利他的なのではないかと考えます。

 

一方で、皆様ご自身のマネジメントという視点で考えると、それは皆様の人生のステークホルダーをいかに幸福にできるかということになります。したがって、経営学を学ぶことは自身の人生において“生き方を学ぶこと”に直結します。

 

このことから経営学は万人の帝王学と呼ばれます。万人が対象ですから、企業、病院のみでなく、国、都道府県、市町村、そして皆様ご自身が対象になるわけです。

 

経営学を学ぶことで生き方が変わる、そんな体験をぜひ皆様にも味わって頂きたいと願います。

臨床医学と経営学の共通点

医療専門職は理系出身者が多いせいか、経営学といった言葉そのものにアレルギーをお持ちの方も多いと思います。しかし、実際には臨床医学と経営学には多くの共通点があります。

 

内科や外科などの臨床医学は単独で成立している学問ではなく、解剖学、生理学、病理学、薬理学などの基礎医学を発展応用し、医療へ実用化した学問であり、治療対象は“疾患”です。

 

一方、経営学も社会学、経済学、法学、心理学などの学問を礎にし、治療対象は企業や病院などの“組織”です。したがって、臨床医学と経営学にはさまざまな学問を統合的に考察し、問題点を治療するという共通点があります(図1)。

 

[図1]臨床医学と経営学の共通点

 

さまざまな基礎医学を統合して臨床医学を考察できる医療者には、経営学的な思考は比較的容易な学びです。さらに、経営学=財務と考え、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表のことばかりに囚われているのではないかといった誤解があります。

 

しかし、臨床医学も経営学も、あくまで疾患で悩む、あるいは組織の内で悩む“人”を対象とした学問です。

 

したがって、コンサルタントなどの医療現場を理解していない経営専門家に経営を任せるのではなく、現場で働く医療者自身が医療経営学をリードすべきだと考えています。

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本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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