(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の死因第2位を占めるのは「心疾患」ですが、中でも特に死亡率が高いのが「心不全」です。もし発症してしまった場合には、再発・増悪を予防する「治療」が欠かせません。本稿では、自宅でできる取り組みとして「睡眠」「運動」のポイントを見ていきましょう。心不全の再発予防策としてだけではなく、心疾患やほかの病気の予防にも役立つ内容です。

「6時間未満の睡眠」「8時間以上の睡眠」はハイリスク

また、2012年にアメリカで発表された研究によれば、睡眠時間6時間未満のグループでは脳卒中や心臓発作の発症リスクが2倍、うっ血性心不全の発症リスクが1.6倍に上昇することが報告されています。一方8時間以上の睡眠を取っている人は、狭心症の発症リスクが2倍、冠動脈疾患の発症リスクが1.1倍になっています。

 

短過ぎず長過ぎない睡眠をしっかり確保することは、心不全をはじめとする重大な疾患を退けることにつながります。まずは、6〜7時間程度、眠ることを心掛けるとよいと思います。

 

「高齢になるとなかなか寝付けなくなる」「睡眠時間が短くなる」ということは、よく耳にする話です。しかし、眠れないのを「歳のせい」と片付けるのではなく、眠れない原因を考えることが大事です。

 

日本には睡眠に問題を抱えている人が多くいます。厚生労働省の「生活習慣病予防のための健康情報サイト」によれば、現在、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」「なんらかの不眠がある」と掲載されています。また、加齢とともに不眠は増加し、60歳以上の方では約3人に1人が睡眠問題で悩んでいます。

 

そうした状態を放置せず、質の良い睡眠をしっかり取ることが必要です。特に気を付けたいのは、睡眠時無呼吸症候群です。

 

血液中の酸素濃度が下がるため、酸素をたくさん送り出そうとして、心臓の働きが強まります。その結果、高血圧や動脈硬化が引き起こされ、心不全や心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくなります。

 

さらに睡眠不足によるストレスによって血糖値も高くなり、糖尿病などさまざまな生活習慣病を招きます。

 

不眠はただ「眠れない」というだけの問題ではありません。実は、命の危険にもつながる怖い病気が隠れているのかもしれないのです。不眠に悩む人はかかりつけの医師に相談したり、専門機関で治療を受けたりして、できるだけ早めに治療を行うべきです。

「軽い有酸素運動」も心臓に良い

心不全をはじめ、心臓病の人にはウォーキングやサイクリング、軽いトレッキングなど有酸素運動がおすすめです。有酸素運動とは、酸素を多く取り込みながら長く持続させる運動のことです。一方、筋トレなど呼吸を要せず短時間で行う運動のことを無酸素運動といいます。

 

有酸素運動がなぜ心臓に良いかというと、多くの酸素が取り込まれることで血流が促され、心肺機能が向上するからです。また、血液中の糖分を運動のエネルギーとして用いるため、肥満や糖尿病の予防にも効果的です。

 

さらに、体を動かす習慣を身につけることでストレスが解消されたり、自律神経の活動が整ったりする効果もあります。「体を動かして汗をかいたら、なんとなく気持ちがスッキリした」という感覚は、きっと誰もが経験していると思います。心理的なストレスや自律神経活動の乱れも、血圧や心拍数を上げる大きな要因になりますから、それらを解消するうえでも有酸素運動は効果的です。

 

時々、「毎日犬の散歩をしているから」「毎日家事をしているから」といった理由で、「自分は運動をしなくても大丈夫」と考えている人もいます。しかし多くの場合、それでは運動量が不足しています。

 

そもそもなぜ「心不全の再発予防に運動が必要なのか」と考えてみれば、最大の理由は「心臓のポンプ機能を強くするため」です。犬の散歩や家事では、心臓に適度な刺激を与え、強くするには不足しているのです。

 

これまで運動習慣のなかった人に、「毎日運動しましょう」と言っても大変かもしれません。しかしそんなときは、「無理のない範囲で散歩をしてみる」「近所の買い物には徒歩で出掛ける」「エスカレーターではなくできるだけ階段を使う」など、できることから始めてみることが大切です。

 

「心臓のポンプ機能を強くするため」という目的から考えれば、過度な運動はかえって心臓の負担になります。あまり頑張り過ぎず、「体調が悪いときは無理をしない」「無理のないペースで続ける」という意識も必要です。

 

 

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

※本記事は、大堀克己氏の著書『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

心不全と診断されたら最初に読む本

心不全と診断されたら最初に読む本

大堀 克己

幻冬舎メディアコンサルティング

心不全と診断されても諦めてはいけない! 一生「心臓機能」を維持するためのリハビリテーションと再発予防策とは? “心疾患・心臓リハビリ”の専門医が、押さえておきたい最新の治療とリハビリテーションを解説します。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
TOPへ