
経営者の相続対策は、事業をいかにして次世代に承継するかに加えて、個人の財産を相続させることも考える必要があります。しかし相続・事業承継に関係する人は多くなる傾向にあり、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。今回は相続人以外に財産を遺そうと考えた経営者のトラブルについてみていきます。※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。
長男の嫁に財産を遺したいと考えた社長は…
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【登場人物】
Aさん…都内で小売業を営む。妻はすでに他界
Bさん…Aさんの長男。すでに他界
Cさん…Aさんの次男。結婚し、都内企業に勤務
Dさん…Aさんの長女。結婚し、都内近郊で専業主婦をしている
Nさん…Bさんの妻。BさんとともにAさんの仕事を手伝っていた
都内で小売業を営んでいる、70代のAさん。30歳を迎えたときに、一念発起で起業し、奥さんと二人三脚で頑張ってきたといいます。そのかいあってか、いまでは30名ほどの従業員を抱えるほどの規模にまで成長しました。
ビジネスは順風満帆、そのものだったといいます。しかし、10年前に3つ下の妻を、その5年後には後継ぎと考えていた長男であるBさんも、病気で亡くしました。
失意のどん底にいたAさんを支えてくれたのは、Bさんの妻であるNさん。Bさんと結婚して以来、会社の総務・経理を担当してくれていました。
長男Bさんが亡くなったとき、Aさんは妻を亡くした以上に失意のどん底にいたといいます。そのとき「お義父さんには、守らないといけない従業員の方々がいるんですから、しっかりしてください」と、Nさんが檄を飛ばしてくれたのです。
Aさんは知っています。夫を亡くしたNさんも、自分以上に哀しいはずなのに、それでも周囲への気遣いを忘れない……そんな女性なのです。そのとき、長男は本当にいい人をお嫁さんにもらったんだな、と実感したといいます。そしてBさんの死後も、Nさんはそれまでと変わらず、会社のために頑張ってくれました。
Aさんにはほかにも、次男のCさん、三番目の子どもであり長女であるD美さんがいました。Aさんの後継ぎは長男であるBさんという、どこか暗黙の了解があったからでしょうか、Cさんは一度もAさんの会社に興味を示すことなく、まったく違う業界で仕事をしています。長女のD美さんは、いまは専業主婦。それぞれの家庭で忙しいのか、それほど遠くに住んでいませんが、ふたりとしっかり会うのは盆と正月だけだとか。
結婚以来、会社のために頑張ってくれているNさん。実子ながら、距離を感じるCさんとD美さん。そんな状況から、「自分に万が一のことがあったら、Nさんにも財産を遺せるようにしたい」と考えるようになったいいます。そこでAさんは、遺言書の作成を思いつきました。
ただ遺言書を開けたところ、初めて「相続人以外にも遺産を」と知れば、争いになることは明らか。まずはNさんに遺産を渡したいと考えていることを、CさんとD美さんに事前に伝えることにしたのです。
久々に3人が顔を合わせたとき、Aさんの想いをCさんとD美さんに伝えました。
「会社は、長年、共に頑張ってくれている従業員の1人に承継しようと考えている」
「個人の財産は、をCさんとD美さんに2/5ずつを、そしてNさんには1/5を遺したい」
思いのたけを伝えているなか、突然、D美さんがすごい剣幕で大きな声をあげました。
「なんで関係のない義姉さんにお金を取られなきゃいけないのよ!」
突然の怒鳴り声に、Aさんは呆気に取られるばかり。D美さんの怒りは収まらず「長男の嫁だからといって、お父さんに取り入って」「Bが死んだときに相続でお金を手にしているはず。義姉さんったら、なんて卑しいの!」次から次へと出てくる文句を、Aさんはただただ聞くしかおりません。これからどう説得したらいいのか……途方に暮れるしかなかったといいます。
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