(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症高齢者を得意とするホームは、問題行動に対する知見が高く、問題行動をさまざまな経験値でねじ伏せていくことができるホームです。では医療的な処置やリハビリが得意かというとそうではないといいます。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で解説します。

「一度入れたら、死ぬまで放置」する家族

在宅介護で問題になるのは、寝たきりの状態ではなく、「看取り期」に入った場合の医療対応です。看取りも自宅で可能は可能ですが、家族にとっては、覚悟が必要です。もちろん、老人ホームに入居していても、家族は、覚悟と体力が必要なのですが、それでも老人ホームの場合は、常に近くに介護職員や看護職員などの専門職がいるため心強いはずです。当然、言わなくても、必要があればサポートをしてくれます。

 

しかし、在宅ではそうはいきません。もちろん、電話をかければ、介護支援者は来てくれますが、24時間のフルサポートは望めません。この状態で、仕事をしながら、子供の面倒を見ながら、親の看取りをすることは、並大抵の覚悟ではできません。

 

私の経験で言うと、在宅での看取りでは、その家族、一族での今までの関係性が重要になってくると考えています。仲が良い家族の場合、兄弟間で連携をし、お互いのことを思いやりながら協力することができます。さらに言うと、そこにも、経済力が重要な要素になっています。

 

平日は近くにいる長女が面倒を見ますが、週末になると、長男が東京から新幹線で面倒を見るために来ますといった話は、よく聞きます。

 

しかし、新幹線代も毎週であれば馬鹿になりません。遠くにいる長男が近くで面倒を見ている次男に経済的な支援をすることで、お互いの役割を果たし、平等性を維持していくことも重要な行為ではないでしょうか? 話を転ホームに戻します。以上のような課題は残りますが、私は次のような流れがベストだと考えています。

 

認知症状の悪化によって問題行動が発生し、自分たちの生活が脅かされてきた→認知症状への対応が得意なホームに入居→ADLの低下(身体機能の衰え)により認知症状による問題行動の消失→QOL(Quality of Life)向上が得意なホームに転ホーム→寝たきり状態→自宅へ。というような流れになると思います。

 

または、寝たきりの状態から看取り期に入った場合、自宅からあらためて老人ホームへ転ホームするという流れもあると思います。

 

老人ホームに、一度入居したらそれで終了、という発想は、親を捨てているのと同じです。私は、現象を見ていると、老人ホームはゴミの処分場と同じであると言わざるをえません。あちらこちらのセミナーや書籍、コラムで繰り返し言っていることですが、その根拠の一つが、実はここにあります。「一度入れたら、死ぬまで放置」という現象です。

 

もし、親はゴミではない、と言うのであれば、ぜひ、親の状態に合わせて、最も適切なホームを探すという行為をしてほしいと思います。今は、私が介護職員をしていた時と比較しても、入居一時金の不要なホームがたくさんあります。つまり、転ホームをすることに、躊躇する環境は、かなり改善されているはずです。

 

洋服は、毎年買い替える人がたくさんいます。サイズが合わなくなれば、着ることができなくなるため、買い替えざるをえません。家だって、家族構成が変わったり、収入が増えたり減ったりすれば、買い替えたり、建て替えたり、引っ越したりします。

 

なぜ、親の老人ホームは、それをしないのでしょうか? 「面倒だから」。もしそう考えているのであれば、考えを変えて、親孝行をしてください、と言いたいです。そのためには、少しだけ自分の時間を使って、老人ホームのことを考えたり、勉強してほしいと思います。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

 

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    ※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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