(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸経営でしばしば問題となる敷金。正しい知識をもつことでトラブルを防ぐことができると、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士はいいます。そこで、敷金のキホンとともに、敷金を「使えるケース」「使えないケース」それぞれについて、具体例を交えながら森田弁護士が解説します。

オーナーが原状回復費用を負担すべきケース

敷金が物件を入居者が入居したときの状態に戻すための費用であるからといって、その負担をすべて入居者に負わせることができるわけではない点には注意が必要です。

 

たとえば、次のような原状回復は入居者ではなく、賃貸物件オーナーが負担すべきものとされています。そのため、これらの修繕にかかった費用を敷金から費用を充当したり入居者に支払いを求めたりすることはできません。

 

経年劣化によるもの

経年劣化によるものの原状回復にかかる費用は、原則として入居者に負担させることはできません。経年劣化とは、年月の経過にともなう建物や設備などの自然な劣化や損耗などのことです。

 

そのため、次のような費用は、原則として賃貸物件オーナー側が負担すべきとされています。

 

・特に破損などはしていないものの次の入居者確保のために行う畳の裏返しや表替え、網戸の張替え、浴槽や風呂釜の取替え
・フローリングのワックスがけ
・入居者が通常の清掃をしていた場合の、全体のハウスクリーニング
・エアコンの内部洗浄
・台所やトイレの消毒

 

こういった年数の経過による劣化の回復費用や、次の入居者を募りやすくするために物件をきれいに保つためにかかる費用は、賃貸物件オーナーの負担となります。

 

通常の使用によるもの

人がその場所で生活などをする以上、物件に多少の傷みが生じることは通常です。人に物件を貸して賃料を得ている以上、通常の使用による劣化については本来賃料に反映させるべきものであると考えられます。

 

そのため、入居者に賃料とは別途で通常の使用で生じた損耗の原状回復費用を請求することはできません。

 

たとえば、次の修繕にかかる費用は、原則として賃貸物件オーナーが負担すべきとされています。

 

・家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡
・日照などによる畳やクロスの変色やフローリングの色落ち
・テレビや冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ
・壁に貼ったポスターや絵画の跡
・入居者所有のエアコンを設置したことによる壁のビス穴や跡
・下地ボードの張替えまでは不要な壁の画鋲やピンなどの穴
・地震で破損したガラス
・構造により自然に発生した網入りガラスの亀裂
・破損や紛失がない場合の鍵の取替え
・機械の寿命による設備機器の故障

 

このような劣化や損傷は、人が物件を使用する以上当然に起こり得るものです。

 

そのため、これらの修繕にかかる費用は原則として入居者に負担させることはできず、預かっている敷金から充当することもできません。

 

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