(写真はイメージです/PIXTA)

相続人のうちの1人が、口座の管理人であったことをいいことに、被相続人の預貯金5,000万円のうち、4,000万円を無断で使い込んでいたことが発覚。ほかの相続人はどうすれば遺産を取り返すことができるのでしょうか。相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、相続人がとれる対応策を解説します。

交渉、裁判…「不当利得返還請求」の進め方

不当利得返還請求を行う方法としては、交渉と裁判があります。

 

交渉の段階では、遺産分割と一緒に協議される場合も少なくありません。その場合、不当利得として返還をする金額の合意ができれば、合意書や遺産分割協議書に明記することにより、解決することも可能です。

 

もし交渉により解決する見込みがない場合には、不当利得返還請求「訴訟」を提起することになります。この訴訟は、家庭裁判所で行われる遺産分割調停とは異なり、民事裁判所(地方裁判所・簡易裁判所)にて審理することになります。

 

そのため、遺産の分け方も決まっていない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行いつつ、民事裁判所で不当利得返還請求を提起することとなります(実務上は、不当利得返還請求を先に解決させてしまい、その後に遺産分割調停を行う場合もあります。)。

 

交渉であれば遺産分割と一体的な解決を目指せます。しかし、訴訟になった場合には、遺産分割と同意に解決していくことが難しくなりますので、ご注意下さい。

 

訴訟時は「客観的証拠」が必須

不当利得返還請求の訴訟になった場合のポイントについてもご説明いたします。

 

請求する側は、自らの主張を裏付ける客観的証拠の提出を行うことが必要となります。預貯金の取引履歴や被相続人の当時の生活状況などから、引き出された金銭は、被相続人が費消したものとはいえないことを主張していかなければなりません。

 

また、引き出した金銭を、預貯金を管理していた相続人が費消したことも主張する必要があります。一番事情を熟知している「被相続人」がすでに亡くなっているため、客観的な資料がほとんどなく、証明ができないということも少なくありません。

 

そのため、不当利得返還請求を検討する場合には、訴訟も視野に入れつつ、なるべく早く弁護士に相談をして、資料などの収集のアドバイスを受けるようにしましょう。

争い回避のために…事前に財産管理方法の話し合いを

相続人のうちの1人が被相続人の生前の預貯金の管理をする場合、使い込みなどのリスクは大なり小なり発生する可能性があります。そのため、できれば、被相続人の生前に、被相続人の財産の管理方法をご家族で話し合っておくとよいでしょう。

 

また、被相続人が認知症などで判断能力が無くなっている場合には、後見制度を活用し、裁判所の監督のもと、被相続人の財産を管理する体制を整えることも検討されるといいでしょう。

 

このような生前対策をとっておくことで、将来、不当利得返還請求といった争いを回避することができるかもしれません。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所
 

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