
借金癖のある夫が亡くなり、残された妻子は全員相続放棄することに。すると、夫の死亡届を出した年金事務所から、未支給年金と遺族年金を受け取れる旨を指摘され、促されるまま手続きを行ったものの、あとから相続放棄の手続きに影響を及ぼさないか不安が募り…。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。
相続放棄後、未支給年金と遺族年金を受給して大丈夫?
【相談内容】
横浜市に住む父親が亡くなり、相続が発生しました。
私たち家族は横浜市内の賃貸住宅で父親と同居していましたが、父親には借金癖があったため、母親と子どもである私を含めたきょうだいは司法書士に依頼し、家庭裁判所で全員、相続放棄の手続きを行いました。
その後、年金事務所で父親の死亡届を出す手続きをしたところ、未支給年金が支給され、母親には遺族年金が支給されるとのことでしたので、年金事務所の職員にいわれるまま手続きを行いました。
未支給年金と遺族年金のいずれも、相続放棄していたとしても受領して問題ないとの説明を受けたと記憶しているのですが、本当にその理解で正しかったのか、あとから不安になってきました。
未支給年金や遺族年金を受取ったことで、万一相続放棄が取り消されてしまうといった事態にはならないでしょうか。
「遺族年金」「未支給年金」は、いずれも相続と無関係
【回 答】
遺族年金などの年金は、亡くなった方の相続財産ではなく、年金法などの法律に基づき、亡くなった方と一定の関係があった遺族に与えられるものです。
これは遺族や同居人で生計を同一にする人などに与えられる、固有の権利です。
このため相続とは関係ありませんので、相続放棄しても、遺族年金を受け取ることができます。
逆にいうなら、遺族年金を受け取っても相続放棄はできます。
また、未支給の年金給付ですが、こちらは法律の規定に基づき「生計を同じくしていた」遺族に支給されます(厚生年金保険法37条、国民年金法第19条第1項など)。
未支給の年金給付も相続とは関係ないため、相続放棄しても受取れます。
最近加入者が増えてきた、私的積立年金である確定拠出年金なども、同様の考え方が適応されることになります。
これは私的年金とはいえ、同様に年金各法令の考え方が適応されるためです。
参考として、代表的な確定拠出年金に関する機関のQ&Aをご覧ください。
日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社 (jis-t.co.jp)
「確定拠出年金に関するQ&A」
https://www.jis-t.co.jp/dc/qa.html#question_48
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
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