老人ホームは終の棲家?…「転ホーム」を拒絶する家族の本音 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームは要介護状態になったら入居するものだから、一度入居したら、そこが「終の棲家」になります。そのようなイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。本当にそうでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で解説します。

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介護で「転ホーム」を勧める理由

しかし、今の私の考えは違います。私は、老人ホームを終の棲家にすることに反対です。今までの私が書いた書籍の中でも、このことは声を大にして言ってきていますが、私の考えは「転ホームの勧め」です。老人ホーム選びには、この「転ホーム」という概念が重要なのです。そして、この「転ホーム」こそが、本当の意味で「有料老人ホーム」を「優良老人ホーム」へと導くキーワードだと私は考えています。

 

よく考えてみてください。もし、あなたが病気になった場合、その病気によって、受診する診療所は変わります。よほど変わり者ではない限り、お腹が痛いと言って、整形外科には行きません。当たり前です。

 

理由は何でしょうか。理由は、医療は専門分野に分かれているからです。医師免許は、診療科目ごとにあるわけではないため、医師の資格さえあれば、どのような患者でも診察することは可能です。

 

しかし、人の身体は複雑系なので、その道を極め、日々勉強している専門医でなければ、わからないことが多いはずです。だから、専門以外は診ないという判断が、医師にはあります。これは、自身の能力と患者の利益を考えた場合、きわめて合理的な考え方だと思います。

 

介護も同じです。介護も相手が人間なので、実は複雑系です。医療と違うところは、治すことを期待されていないため、結果が問われないところです。だから、誰にでもできる、なんでもOK、ということになってしまいがちですが、実は介護もよく見てみると、認知症の高齢者介護が得意なホームとか、リハビリテーションが得意なホームとか、自立系の高齢者の見守り介護が得意なホームとかなど、多様に分かれています。

 

「何でもできます。私にお任せください」は、20年前の話であり、いまだにこのようなフレーズを平気で言う老人ホームは、信用してはダメだと思います。

 

なぜなら、なんでもできる老人ホーム、要はなんでもできる介護看護職員など、この世に存在しないからです。つまり嘘なのです。もし、老人ホームから「なんでもできます」と言われたら「嘘つき」だと疑うべきではないでしょうか?

 

老人ホームを組成している介護職員は、大別して自立系を得意とする職員と要介護系を得意とする職員とに分かれます。要介護系は認知症系、リハビリ系に分かれます。リハビリ系には身体介助が得意な職員が含まれます。

 

さらに、稀ですが、レクリエーションが得意な職員が交じります。医療のように各分野に対する資格や勉強する組織(学会)が明確に存在していれば、わかりやすいのですが、多くは自己研鑽の世界なのでわかりにくいことになります。

 

認知症などは多くの研修や資格がありますが、その研修や資格があるからといって、専門的なのかと問われれば、介護の場合、医療と違って突き詰めて考えた場合、たんに生活を支えているにすぎないため、究極的には、専門性よりも人柄、性質、といった個別性の高い情緒的なスキルのほうが重要になってしまいます。専門技能の優位性を、入居者やその家族に評価してもらうことは、なかなかできません。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

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    株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

    (株)ASFON TRUST NETWORK常務取締役。1965年神奈川県生まれ。日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービスに入社。介護付き有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画業務に従事する。2006年に退職後、同社の元社員らと有料老人ホームのコンサルティング会社ASFONを設立。2010年、有料老人ホーム等の紹介センター大手「みんかい」をグループ化し、入居者ニーズに合った老人ホームの紹介に加えて、首都圏を中心に複数のホームで運営コンサルティングを行っている。老人ホームの現状と課題を知り尽くし、数多くの講演を通じて、施設の真の姿を伝え続けている。

    著者紹介

    連載失敗しない「老人ホーム選び」の鉄則

    ※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

    間違いだらけの老人ホーム選び

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