日本人の給料を上げるためには、経営者がまず動かなければ何も始まりません。そして日本の産業界が変わり、学校教育の内容が変われば、日本の給料は上がり、「安いニッポン」から脱却するための解決の道は開けるといいます。大前研一氏が著書『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』(プレジデント社)で解説します。

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優れた経営者はプログラミング思考ができる

■21世紀型の経営者を増やす

 

日本人の給料を上げるためには、経営者がまず動かなければ何も始まらない。間接業務のデジタル化やDXも、人員を減らして労働生産性を高めることも、すべて経営者の判断と行動にかかっている。

 

つまり、まず経営者から21世紀型に生まれ変わる必要がある。具体的には、構想力があり、システム思考ができる経営者になるということだ。

 

今や経営者にとってシステム思考、プログラミング思考は必須科目となった。自分の構想をシステム化し、説明できなければ仕事にならないのだ。

 

実際、優れた経営者はシステム思考、プログラミング思考ができる。社会に出てからも勉強を続けた結果だ。学生時代は文系だった人でも、成果が出せるまで挫折せずに勉強し、習得しているのだ。

 

たとえば、日本交通の川鍋一朗会長は、日本初のタクシー配車システム「ジャパンタクシー」の原型を構築した。このシステムによって、タクシーをスマホで呼ぶことができる。さらに、タブレット端末をタクシーに設置してキャッシュレス支払いへの対応と、乗客の属性に合わせた動画広告配信というタクシーに新しい価値を生み出すことに成功し、他社にシステムの共用を呼びかけている。

 

川鍋氏は、アメリカでウーバーが登場したとき、「このままでは日本のタクシー業界は危ない」と危機感を持ったそうだ。そこで、社長を外部から招聘して、自身はプログラミングスクールに通ってシステム開発を進めたという。

 

昨年末にIPO(株式公開)をし、ロボアドバイザーによる投資事業で業界断トツの位置にいるウェルスナビの柴山和久社長も、自らシステム開発を行った経営者である。

 

柴山社長は、アメリカの家庭では当たり前のように資産運用がされていて、アメリカ人である妻の親の資産が自分の親より10倍もあったことに衝撃を覚え、日本の働く世代のための資産運用サービスが必要だとして起業した。自ら(川鍋氏と同じ)プログラミングスクールに通って、ロボアドバイザーによる資産運用システムの原型を構築したのだ。

 

この2人はともに文系出身だが、プログラミング思考を見事に身につけた経営者だ。経営者の頭の中にある構想をシステムに落とし込むことができる、彼らのような人材が、本当の「DX人材」と言ってよい。

 

とはいえ、川鍋氏や柴山氏のように、自ら行動できる経営者は多くないだろう。「インダストリー4.0」と言われて10年たつが、システム、またはその前提となるプロトタイプを自らつくろうという経営者をほとんど見かけない。

 

日本の将来を考えれば、システムがわかる人間が経営者になるべきだ。経営者が自分の構想をプログラムに書くことができれば、外部のITエンジニアにゼロから頼むより、ビジネスのスピードは何倍も速い。プログラミングする時間がなければ、システム設計まで自分で進めればいい。

 

若い世代に目を向けるなら、プログラミングができる中高生は、大企業の「情シス」に入るのではなく、起業をめざすべきだ。構想力とシステム思考を備えた若者の起業が増えれば、日本経済は成長に転じてもおかしくない。

 

日本の産業界が変わり、学校教育の内容が変われば、日本の給料は上がり、「安いニッポン」から脱却するための解決の道は開けるはずだ。

 

大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学学長

 

 

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本連載は、大前研一氏の著書『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』(プレジデント社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日本の論点 2022~23

日本の論点 2022~23

大前 研一

プレジデント社

「なぜ日本では真面目に働いても給料が上昇しないのか」――。 約2年間にわたり猛威を振るい、各国の政治経済に深刻な影響を与えた新型コロナウイルスは、ワクチン接種が進んだ結果、いまだ予断を許さないとはいえ、世界は新…

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