ニューヨークにあるゴールドマン・サックス証券には、最盛期の2000年に600人在籍していたトレーダーが、現在はたった2人しか残っていないといいます。代わりにコンピュータ・エンジニアを大量に採用し、同じ仕事を200人で進めています。大前研一氏が著書『日本の論点 2022~23安い』(プレジデント社)で解説します。

ITに限らないガラパゴス化した日本の未来

■移民受け入れ問題は長期的に考える

 

IT人材にかぎらず、少子化が進む日本では、労働力不足も問題だ。現状のまま進めば、2030年には労働需要の1割近くの600万人以上が不足するとの予測もある。

 

現在でも、日本には技能実習生を含めて170万人ほど外国人材がいる。留学生のアルバイトを含めれば、実質的に200万人ほどになるだろう。しかし、人口1億2500万人を超える国で200万人程度では1・6%にすぎない。現状で500万人規模の人手不足なので、外国人材がもっと増えてもおかしくない。移民政策で成功したドイツは、外国人材が労働人口の10%以上を占めている。

 

ドイツの移民政策は50年以上の歴史があり、旧西ドイツが戦後復興で高度経済成長をする中、労働力不足を補うためにイタリア、スペイン、ギリシアなどの近隣国から移民を受け入れた。現在は、外国にルーツを持つ人たちの3分の1がドイツで生まれていて、第2世代、第3世代が活躍する時代になった。

 

労働力を輸入することができないのであれば、人件費が安い国にアウトソーシングすることで労働力不足を補うことはできる。特にデジタル関連の仕事は、ネットを通じて受発注できるので、国境は問題にならない。

 

たとえば、アメリカ企業はフィリピン、インド、ベラルーシ、ウクライナなどの人件費が安くてシステム開発能力が高いIT企業に外注することが多い。コンピュータ言語は世界共通だし、発注先は英語ができるため、仕事はスムーズに進む。日本企業も、フィリピンなどにシステム開発を発注すれば、安くていいものができるはずだ。そうなると、わざわざ日本に来て働いてもらう必要もない。

 

しかし、現状では難しい。間接業務のIT化でいえば、外注先は日本語と日本企業のしくみがわからないためだ。

 

私は1990年代にインド企業3社と合弁でソフトウェア会社を設立したことがある。そのときインドのITエンジニアたちは日本で働くことを嫌がっていた。

 

日本語を覚えるのが面倒だからだ。さらに、日本には、旧態依然とした独自のOSが普及していた。世界共通のOSを勉強したエンジニアは、他の国でいくらでも稼ぐことができ、英語圏であれば言葉の壁もない。よほど報酬が高額でなければ、日本の仕事はやりたがらない。語学の問題があって海外のIT企業に外注できないことも、日本企業のデジタル化やDXが遅れている原因の一つだ。

 

大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学学長

 

 

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    本連載は、大前研一氏の著書『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』(プレジデント社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

    日本の論点 2022~23

    日本の論点 2022~23

    大前 研一

    プレジデント社

    「なぜ日本では真面目に働いても給料が上昇しないのか」――。 約2年間にわたり猛威を振るい、各国の政治経済に深刻な影響を与えた新型コロナウイルスは、ワクチン接種が進んだ結果、いまだ予断を許さないとはいえ、世界は新…

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